消費税増税前の駆け込みは

2度の延期を経て、ついに消費税率が10%へ引き上げられた。個人的には消費税を意識して駆け込みで購入したものはなかったが、友人は「(値段が)高いものは増税前に買っておかないとね」と言って、前から欲しかったというキャンプ用のテントを購入していた。その友人の場合は、買うかどうかを迷っていた品物を買うための、"自分への言い訳"として今回の増税を利用したようだ。


話はさかのぼるが、前回の消費税率引き上げ時の景況感はどうだったのか。TDB景気動向調査の結果を、今一度振り返ってみたい。第二次安倍内閣が推進したアベノミクス効果が寄与し景気の上昇が続くなか、駆け込み需要のピークを迎えた2014年3月に景気DIが調査開始以来の最高(当時)となる51.0を記録した。しかし、増税が実施された翌4月には前月比で4.2ポイント下がり、過去最大の落ち込みとなる。この時の駆け込み需要の拡大と反動減が、強く記憶に残っている方は多いだろう。


そして今回の消費税増税。駆け込み需要はどの程度起きているのか。2019年7月に発表した特別企画「消費税率引き上げに対する企業の意識調査(2019年)」では、建設業の19.6%で「既に駆け込み需要がある」との回答が得られた。また、小売業のおよそ半数(45.7%)が同調査時点で「今後出てくる」と見込んでいた。実際に耐久財や軽減税率の対象外の商品などにおいて「駆け込み需要あり」との声が、その後の景気動向調査において寄せられている。これを裏付けるように4Kなどの薄型テレビや洗濯機といった家電の出荷額が伸びている。また、イオンと花王が9月に洗濯洗剤のまとめ買いキャンペーンを共同で企画するなど、駆け込み需要を取り込もうと各社販売に力を入れた。増税直前の出荷額や販売額といった各種統計数値が出るのはこれからになるが、前回の増税時に比べれば緩やかながらも、駆け込みの需要は起きたと考えられる。


駆け込み需要が緩やかであれば、反動もまた緩やかなものになる。また、キャッシュレス決済でのポイント還元といった消費落ち込みへの対策を政府が講じており、前回増税時のような極端な景気の腰折れは避けられる可能性が高い。ただし、楽観はできない。米中貿易摩擦などの海外リスクを抱え、先行きは不透明だ。内閣府の消費者態度指数は2019年8月まで11カ月連続で低下し、景気動向調査の景気DIも2019年7月まで8カ月連続で悪化するなど、消費者と企業の双方のマインドは低下基調にある。消費税率の引き上げを経て、国内景気が今後どうなっていくのか、引き続き景気DIの動向を注視いただきたい。

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