計画運休が労働者や企業の行動指針となるか
2019年9月9日(月)未明に首都圏に上陸した台風15号の影響で、首都圏の鉄道各社は9日、地下鉄を除くほぼ全線で始発からの運転を見合わせた。首都圏で大規模な計画運休が実施されたのは今回で2回目(前回は2018年9月30日(日))となる。
前回の反省や国の検討会などを踏まえて、各社は前日から運休計画を発表。しかしながら、通勤利用者のなかには、運行再開まで長時間改札で入場を待つ人や運行している路線まで様々な交通手段で乗り継いだ人も多くいたようだ。さらに、再開した途端、駅に人が殺到したことにより入場規制がかかるなど、一部で大きな混乱が生じていた。
画運休を実施する理由は、第一に利用者の安全確保のためである。特に、列車の遅れによる駅での混雑や長時間にわたる駅間停車による混乱を防ぐ意味合いは大きい。併せて、不要不急の外出の抑制、イベントの休止や早期切り上げなど、社会の安全を確保する役割も果たしている。
これらを踏まえると、今回の計画運休は、必ずしも成功だったと言えないのではないか。とりわけ、運行の再開時間はもう少し検討する余地があるのではないだろうか。
今回は午前8時ごろから順次運行が再開されていったが、午前8時や9時から始業の労働者は、多少の遅れで会社に到着しようと行動し、運行再開と分かるや否や駅に殺到。安全確保が危ぶまれるほどの混雑をみせていた。
鉄道各社の不断の努力と懸命な復旧作業で運行が再開されたことは感謝してもしきれないが、例えば午前中は全線運休くらいの大胆な判断があってもよかったと思う。無理をしてまで出社しようとする意識が、もう少し和らいだのではないか。
他方で、企業でも社員の出社や退社時の安全確保という観点から取り組むべきことがある。こういった災害時にリモートワークの促進がよくあげられるが、最も重要なことは、日頃から出社や退社時におけるルールを明確にし、伝達しておくことであろう。例えば、計画運休が発表された場合は、「午前中の出社義務はなし」や「運行開始後3時間以内の出社とする」などというルールを予め決めて周知しておけばよい。
計画運休は、JR西日本が2014年10月に初めて本格的に取り組んだ。まだまだ始まったばかりの施策であり、考慮する事項や検討すべき課題はたくさんある。しかしながら、こうした取り組みが、一人ひとりの安全で柔軟な働き方への一歩となるであろう。