サウジアラビア無人機テロを機に原油情勢を概観する
9月14日にサウジアラビアの国営企業、サウジアラムコの石油施設2カ所が無人機による攻撃を受けた。サウジアラビア国内での一日あたり生産量の半分以上となる570万バレルの石油供給が停止し各国の原油先物価格が急騰、アメリカの原油先物価格WTI(West Texas Intermediate)は13日の終値1バレル54.85ドルから、16日終値では62.90ドルとなり約15%上昇した。17日にサウジアラビアのエネルギー相が記者会見で、9月末には日量1,100万バレルまで生産能力が回復する見通しと述べ、これを受けてWTIなどの原油先物価格は低下をみせたが、しばらくは不安定な動きをみせるのではないかと予想される。
日本は原油の輸入に関して、中東への依存度が非常に高い。経済産業省の石油統計によると、2018年の原油輸入量は1億7,748万キロリットルで、そのうち中東からの輸入量は1億5,661万キロリットルであり、原油輸入の約88%を中東に依存している。なかでも、サウジアラビアからの輸入量は6,752万キロリットルで全輸入量の約38%を占めている。日本の原油輸入量は年々減少傾向で推移している。しかし、中東への依存率は2003年以降80%から90%とほぼ横ばいであり、とくにサウジアラビアからの輸入比率は2003年の約23%から上昇している。
一方、海外の原油事情は状況が異なる。国際貿易センター(ITC; International Trade Centre)の統計によると、現在、原油[1]を最も輸入している国は中国である。中国でも輸入先1位は2015年までサウジアラビアであったが、2016年からロシアとなった。2018年では、ロシアからの輸入量は全体の16%、アフリカのアンゴラが3位で10%、南米のブラジルが6位で7%となっている。中東への依存度は高いものの、輸入先が分散化している。
アメリカは2000年代のシェール革命以降、国内での原油の生産量が増加し続けている。米政府エネルギー統計EIA(Energy Information Administration)によると、2018年時点でアメリカの油[2]の生産量は日量1,787万バレルでサウジアラビアを抜き、世界最大の国となっている。またITCの統計によれば、2018年時点で輸入先はカナダが40%で1位であり、大部分の原油が北米で調達されている。
無人機などの技術革新によって中東の地政学リスクが懸念されるなか、日本国内の原油の安定供給に向けて中東依存の見直しが必要なのではないかと感じる。
[1] ITCの統計で商品分類、HTSコード2709より引用
[2] EIAの統計では原油、その他の液状石油、バイオ燃料を含めている