キャッシュレス・ポイント還元事業の効果とは?

10月1日からの消費税率引き上げにともない始まったキャッシュレス・ポイント還元事業をきっかけに、私もQRコードによるスマートフォン決済を始めてみた。想像以上に便利で、わずかなお得感も楽しい。


キャッシュレス・ポイント還元事業とは経済産業省が主体となって実施している補助金制度で、2020年6月までの9カ月間に限り、この事業に加盟した中小・小規模企業が運営する店舗、またはコンビニなどのフランチャイズチェーン店舗でキャッシュレス決済をすると、5%または2%が消費者に還元されるというものである。


経済産業省によると、同事業の対象となる登録加盟店数は64万店である(11月1日時点)。さらに、11月11日には73万店になる見込みで、1日で約5,000店程度の登録申請があるという。さらに1日当たり約10億円分のポイントが消費者に還元されている。政府は2019年度分のポイント還元の原資として1,786億円を予算に計上しているが、想定以上に利用されており、このペースが続くと原資が足りなくなる可能性も考えられる状況となってきたようだ。還元の原資のほかに、中小・小規模企業がキャッシュレスに必要な端末導入の負担費をゼロにするなど、同事業には総額2,798億円が予算計上されているが、還元に必要な原資が底をつけば、さらなる税金が投入されることとなる。


総務省が2019年5月31日に発表した「平成30年通信利用動向調査の結果」によると、年齢別のスマートフォン保有率は60~69歳で56.2%と5割を超えたものの、70~79歳で27.2%、80歳以上で7.8%だった。6~12歳でも32.9%にのぼるなか、80歳以上は各年齢別では最低の水準となっている。


キャッシュレス・ポイント還元事業は消費者の誰もが受けられる恩恵であるが、キャッシュレスを簡単に導入できるスマートフォンの保有率は高齢になるほど低いのが現状だ。


政府は2025年までに民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済比率40%を実現するとしているが、高齢者が置き去りにされてはいないだろうか。


そして、台風15号と19号による農林水産業への被害額が、合計1,778億円(10/29時点)になると発表された。被害額とほぼ同額の費用が計上されているキャッシュレス・ポイント還元事業がどれだけ効果をあげ、国民の生産性や利便性の向上に役立ったのか、きちんと見届けなければいけないと強く感じた。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。