好調なインバウンド、2020年は

通勤の際、地下鉄の乗り換えで使う東京都内の駅。とりわけ帰宅時に、スーツケースや大きな買い物袋を抱えたさまざまな国の観光客を見かける。日々の生活のなかで、日本を訪れる外国人観光客の増加を肌で感じているが、昨年(2019年)のインバウンドの動向を振り返ると、その勢いは若干減速してきている。


まずは一昨年の数値を確認したい。日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の年間訪日外客数は前年比8.7%増の約3,119万で、同局が統計をとりはじめた1964年以降の最多を更新した。市場(国・地域)別では、20市場のうち香港を除く19市場で過去最多を更新。市場ベスト3は、1位が中国で約838万人(前年比13.9%増)、2位が韓国で約754万人(同5.6%増)、3位が台湾で約476万人(同4.2%増)となり、中国が全市場を通して初めて800万人を突破した。


そして昨年、2019年1月から11月までの訪日外客数の推計値は、前年同期比2.8%増の約2,936万人となった。通年で過去最多を更新することが濃厚な一方で、2018年に比べると増加幅は縮小が見込まれる。2019年(1~11月)の市場別のベスト3は、1位が中国で約888万人(前年同期比14.2%増)、2位は韓国で約534万人(同22.2%減)、3位は台湾で約454万人(同2.7%増)と、顔ぶれは前年と変わらない。1位の中国は、同国の景気減速や元安・円高といったマイナス要因があるなかで、2018年を若干ではあるが上回る伸び率を確保している。他方、2位の韓国は、日韓関係の悪化を背景に訪日外客数が2019年7月から11月まで5カ月連続して減少。減少幅は拡大基調をたどり、11月単月では前年同月比65.1%減と大きく落ち込んでいる。訪日外客数の4分の1を占めていた韓国からの旅行者数が大きく落ち込んだことが、全体数を下押しする要因となった。


それでは2020年のインバウンドはどうなるのか。韓国の大幅な減少へ目がいってしまうが、残りの19市場すべてが2019年に11月としては過去最多を記録しており、好調である。前出の日本政府観光局(JNTO)によると、2019年のラグビーワールドカップが日本で開催された9月から10月の間に、大会出場国からの訪日外客数(累計)は約76万人と前年同期比で29.4%増加した。今年はついに東京五輪が開催される。世界各国からさらに多くの観光客が訪れ、インバウンドの消費額も大きく膨らむと見込まれる。この好機を活かし、五輪が閉幕した後も多くの外国人観光客が日本へ来てくれるよう、スポーツによる感動に加えて、文化といった日本の「ソフトパワー」も全世界へ発信していくことが大切であろう。

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