暖冬、温暖化が及ぼす影響は
暖冬は、国内企業にも影響を及ぼしている。2019年12月TDB景気動向調査の「企業の声」では、暖冬に関するコメントが複数の業種で散見された。「繊維・繊維製品・服飾品製造」や「繊維・繊維製品・服飾品卸売」では、冬物衣料の売上が暖冬で例年より売上が落ちているとの声が多く挙がった。ガソリンスタンドなどが含まれる「専門商品小売」は、灯油などの燃料の販売が暖冬で振るわない。水産物の不漁もニュースで取り上げられているが、その理由としてもやはり暖冬や温暖化が挙げられている。例えば近年不漁が叫ばれる「さんま」は、海水温の上昇で日本周辺の回遊ルートが変わってしまった可能性があるという。水産物の不漁について、「農・林・水産」や「飲食料品・飼料製造」、「飲食料品卸売」の企業から多く声があり、さらに水産物の梱包に使う発泡スチロールを製造している企業や、漁獲に用いる網を製造している企業など他業種にも影響が及んでいる。
2019年5月に、気象庁気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所の研究チームは、温室効果ガスの排出にともなう地球温暖化がなかった場合、2018年のような猛暑は起こらなかったと発表した。くわえて、1850年以降で地球全体の平均気温が2度上昇した場合、1年で日本国内にて猛暑日が発生する回数が、現在の1.8倍になると推定している。また、2020年1月に気象研究所は、現時点を超える政策的な緩和策をとらずに温暖化が進んでしまった場合、21世紀末における日本の位置する緯度付近を通過する台風(熱帯低気圧)の移動速度が、現状から約10%遅くなると発表した。つまり、将来台風が日本付近に接近した際、その影響が長期間に及び、現在以上に洪水被害が発生する恐れがある。
持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの一つである目標13は、「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」となっている。気候変動やそれにともなう災害が今後より増加すると予想されるなか、目標13の通り温暖化を止めるための「緊急対策」を講じなければならないだろう。また、温暖化が進んでしまうことも織り込んで、どのように環境に適応していくかを考えなくてはならない時代に突入してしまったと感じる。