日銀は国内経済の捉え方を分かりやすく説明すべき

日本銀行は1月20日と21日に金融政策決定会合を開き、現在の金融緩和政策を維持することを決めた。


海外需要や消費税率引き上げによる影響の先行き見通しが、2019年10月時点と変わっていないということであった。しかし、インフレ率の見通しについては、2019年度、20年度、21年度のいずれも10月時点から引き下げている。


インフレ率の見通しを引き下げながら金融政策を現状維持という決定は、多くの国民にとって非常に分かりにくいのではないだろうか。こうした政策決定を理解するうえでは、日銀が発表している「経済・物価情勢の展望」がヒントになる。


そこでは、現状の景気判断を「基調としては緩やかに拡大している」としつつ、先行きについて「当面、海外経済の減速の影響が残るものの、国内需要への波及は限定的となり、2021年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる」と結論づけている。


具体的にみると、海外経済は持ち直しにやや時間を要するものの、総じてみれば緩やかに成長するため、「輸出は緩やかな増加基調に復していく」と予想。また、国内需要について、設備投資は都市再開発関連投資や省力化投資、研究開発投資などを中心に「緩やかな増加を続ける」と予想し、個人消費は「消費税率の引き上げなどの影響が次第に減衰し、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加傾向をたどる」としている。


その結果として、2019年度、20年度、21年度の実質GDP成長率見通しを10月時点からいずれも引き上げたのである。こうした見通しなどが金融政策の現状維持の背景となっている。


注目されるのは、政府の経済対策への見方であろう。2019年度補正予算が1月30日に成立したが、政府は主に2020年度の成長率を上振れさせるとみている一方、日銀は2021年度まで上振れ効果が持続すると捉えている点で相違がある。日銀は、日本経済が必ずしも財政政策に支えられていくとは考えていないが、政府と比べて景気の先行きに対してやや楽観的に捉えているように見える。


帝国データバンクの「TDB景気動向調査」では、国内景気の基調判断を「後退局面」とし、今後も「緩やかな後退続く」と見込んでいる。一部で好材料はあるものの、海外経済の動きや企業の生産活動の停滞、コスト負担の高まり、消費税率引き上げ、また新型肺炎など外部環境の影響について、より慎重に捉えているためである。景気の見方はさまざまな意見があって当然だが、専門家や市場関係者さえ分かれば良いという姿勢ではなく、多くの人に理解できる説明こそが重要ではないだろうか。

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