五輪開催でテレワークの普及が加速するか
そうしたなか、我が子の同級生の母親たちの間で、週1回などの在宅勤務を始めたという話をチラホラと聞くようになった。もしも在宅ワークができたら...と自身に置き換えて想像してみると、通勤の往復で使う3時間が自由になる。そうすればちょっとした通院や銀行・公共機関での手続きなどへ気軽に行くことができるほか、子どもの習い事の送迎や学校行事の参加といった子供関連の時間も増やせるであろう。自宅で過ごす時間が増え、日々の慌ただしさから幾分解放されることで、仕事へ対して今までよりも一層集中して取り組めるのではないかと、プラスの効果を個人的には期待してしまう。
しかし、帝国データバンクが発表した「働き方改革に対する企業の意識調査(2019年12月)」によると、「サテライトオフィスやテレワークの導入」は7.8%と低水準にとどまっている。企業における運用ルールや環境の整備にともなう負担が重いことに加え、セキュリティの確保など、クリアすべき課題が多く、テレワークの導入は容易でないことがうかがわれる。
他方、今年開催される東京五輪によって、テレワークの利用拡大が予想される。大手ハウスメーカーの大和ハウス工業は、五輪の期間中に東京の本社などで働くおよそ3,000人の社員を対象にテレワークを実施すると発表。交通網の大混雑が予想されるなかにあって、大手企業を中心に五輪期間中のテレワーク勤務の実施が次々と発表されている。ちなみに2012年に開催されたロンドン五輪では、ロンドン市内の約8割の企業が大会期間中にテレワークを実施したことで、交通の混雑が抑制できたうえ、生産性の向上などにもつながったそうだ。また、育児休業を取得すると表明した小泉進次郎環境相は、休業や短時間勤務に加えて、テレワークを組み合わせることで、3カ月間で合計2週間分の育休を取得すると報道されている。
まずは大手企業や社会的に影響力を持つ人たちがテレワークをはじめ、より良い仕組みを構築し、効果などを発信してもらいたい。そうすることで、東京での五輪開催も追い風となり、国内でテレワーク普及に向けた動きが加速することを期待したい。