寄付行動について思うこと
政府は、5月25日緊急事態宣言の解除を発出。経済再開に向け世の中が動きだそうとしているなか、在宅勤務をしていた私のもとに一通の郵便が届いた。かつて通っていた高校の同窓会からであり、内容を確認すると、高校がタブレット端末などを用いた遠隔授業の実施を検討しており、そのためOBから支援金を募っているとの旨が記載されていた。卒業したのは遠い昔(この様に書くととても悲しいが)なのだが、実は、私は現在も高校から歩いて数分のところに住んでいる。買い物で外出した時や通勤で高校の近くを歩いていても、普段は多い生徒の姿をこの数カ月は全くみないようになり、寂しい限りであった。授業だけにとどまらず、部活動などの学校生活そのものが難しい状況が続いているのだろう。そんなことを考えながら、当時のクラスメイトとグループラインでこの件を共有・相談し、同窓会が指定する口座に入金した。遠隔授業など含め、学校生活をよりよくするため活用していただければと願っている。
どのようにして人々に寄付行動を促すかについては、先月の当コラム(「行動経済学、ナッジで取り組む『新しい生活様式』」)で取り上げた行動経済学の分野でも研究が進んでいる。現在企業の資金調達の一つとして活用されることも多い、クラウドファンディング(Crowd Funding)のサイトでは、そのようなナッジ的な仕組み、仕掛けが多く施されている。
先のコラム内で手洗いを促進するナッジとして紹介した、「となりの人は石鹸で手を洗っていますか」の掲示に効果があったのと同様に、「他人がどのように行動しているか」は、我々が行動を決めるにあたって非常に重要な要素となっている。クラウドファンディングのサイトでは、各プロジェクトに対して一定の期間における支援者の数、目標金額に対する支援金の総額などが「見える化」され、他人がプロジェクトにどのように投資しているかという情報を知ることができる。
また、TwitterやFacebookなどSNSへ拡散できる仕掛けや、支援者へのリターン(インセンティブ)などを明記していることも、行動を促すトリガーとして機能していると考えられる。
今回の母校からの呼びかけは、私にとって再びかつての同級生との連絡をとる良い機会となり、新型コロナウイルス禍においても、元気でやっている様子を知ることができた。ありがたいことに、高校の同級生(担任の先生も)とは現在でもこのような定期的な交流があり、グループラインに登録している同級生のほとんどが、寄付を前向きに検討しているようにみえた。寄付を促す仕組みとして寄付金控除などがあるが、SNSなどを通じ個人間のネットワークを活用することで、より効果的に促進できるのではないだろうか。
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