新型コロナウイルスの影響を受ける公的統計と存在感増す代替データ
厚生労働省も、毎年実施している国民生活基礎調査について、新型コロナウイルス感染症への対応などの観点から、令和2年調査を中止すると発表。文部科学省も小学校、中学校の児童を調査対象とした全国学力・学習状況調査を中止すると発表している。
新型コロナウイルス感染症で先行きが不透明ななか、これらの公的統計の調査の延期、中止が相次いでいることは、現状を把握するうえで今後大きな懸念材料になるだろう。
そうしたなか、公的統計を代替、補完するデータとして、POSデータやクレジットカードの取引情報、スマートフォンの位置情報[1]、SNSの投稿などの「代替データ」が注目を浴びている。
国内クレジットカード最大手のジェーシービー(東京都港区)とナウキャスト(東京都千代田区)の2社は、匿名加工されたクレジットカードの取引データや属性データを活用し統計化した、国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供している。すべての消費動向を示す総合消費指標をはじめとして、業種別の消費指数について2週間で集計し配信されており、政府の公表する既存の消費統計などと比べて速報性が高い。また、この「JCB消費NOW」のデータは、内閣府の月例経済報告[2]など政府の景気判断においても活用されている[3]。
帝国データバンクが毎月実施しているTDB景気動向調査は、2002年に調査が開始されてから18年間、毎月多くの企業の皆様からご回答をいただくことで、代替性、速報性の高い情報を発信している。新型コロナウイルスによる影響で大変ななか、多くの企業の皆様から貴重なお時間をいただいていることで、継続して調査結果を公表できている。この場をおかりして御礼を申し上げるとともに、いただいた貴重な声をより見やすい形で公表できるよう努めたい。
[1] 当コラム2020年4月15日掲載「新型コロナウイルス対策に活用されるビッグデータ」
[2] 内閣府「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(令和2年7月)」https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2020/07kaigi.pdf
[3] TDB景気動向調査でも、個人消費に関連した企業のセンチメントを測る指標として、業種分類のうち、小売業および飲食店、旅館・ホテル、娯楽サービス、教育サービスの景気DIから、「個人消費DI」を作成している。(TDB景気白書2019年版、景気Special Report No.1 「消費の実態はどこにあるのか?」)