新政権は社会のデジタル化を果敢に進めるべき

9月14日、自民党の両院議員総会において、菅義偉内閣官房長官が第26代自民党総裁に選出された。16日には臨時国会で安倍晋三首相の後継となる首相に指名される。2012年12月の第2次安倍政権の誕生とともに官房長官を務めてきており、歴代官房長官のなかでも最長の在任記録を保持している。


また新元号「令和」を発表した会見の印象も強く、若者のなかでは「官房長官といえば菅さん」という感覚を持っている人も多いのではないだろうか。


政策としては「安倍政治の継承」を掲げており、アベノミクスの流れは今後も続いていく可能性が高い。しかし、安倍政権で達成できたことがある一方で、やり残されたことも多い。とりわけ、アベノミクスの柱である三本の矢は、日本銀行による金融緩和によるところが大きく、機動的な財政政策が十分であったかどうかは議論の分かれるところであろう。


さらに"民間投資を喚起する成長戦略"に関しては、さまざまな政策が打ち上げられたものの、残念ながら多くの課題が新政権に持ち越された。


特に成長戦略の筆頭となるはずだった医療・農業・教育・雇用などにおける「岩盤規制改革」は、さまざまな分野で道半ばである。もちろん、農協制度は60年ぶり、漁業制度は70年ぶりの大改革が行われ、国家戦略特区では37年ぶりの医学部新設、52年ぶりの獣医学部新設もなされるなど、一定の成果は評価されてしかるべきである。


しかし、新型コロナウイルスの感染拡大にともない顕在化した、日本が抱える大きな弱点への対応は待ったなしと言える。政府・行政・民間ともに世界から大幅に遅れていることが露わとなった「デジタル化への対応」である。緊急事態における円滑な支援や対策の実施に対して、旧態依然とした仕組みにより、国民の生命・財産をも危険にさらすことも浮き彫りとなった。


歴史を振り返ると、パンデミック(感染症の世界的大流行)は2つの教訓をもたらしたと言われている。第一に、パンデミック後は従前とは大きく異なる社会が訪れること、第二に、混乱の中でその社会の弱点が露呈される、ということである。新政権には、ぜひ経済・社会のデジタル化についてスピード感を持って進めてほしい。デジタル化に向けた改革の成否が、新型コロナショック後に現れる新しい社会において、これからも国民が豊かな生活を送り続けられるかどうかを決定づけることになろう。

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