第四次韓流ブーム

2020年夏、再び韓流ブームが到来し、その勢いは現在も続いている。


外出自粛を背景に、ブームの火付け役となったのが、韓流ドラマ「愛の不時着」や「梨泰院(イテフォン)クラス」と言われている。NetflixやAmazonプライムなどの定額制動画配信サービスでは、韓流カテゴリーが充実しており、視聴率ランキングの上位には、韓流ドラマが並んでいる。ブームを後押ししたのは、日韓合同のグローバルオーディションプロジェクト「Nizi Project」で結成された日本人の9人組ガールズグループ「NiziU」。夢に向かってオーディションに挑む彼女たちの姿が共感を呼んだ。彼女たちのミュージックビデオの再生回数が1億回を超え、「縄跳びダンス」を真似する人が続出。「愛の不時着」で登場した「オリーブチキン」が新聞で取り上げられるなど、関連する話題はつきない。


韓流ファンには必須アイテムである動画配信市場も好調である。デジタルコンテンツ協会『動画配信市場調査レポート2020』によると、2019年の動画配信市場規模は、前年比26%拡大し2,770億円(推計)となった。今後も、定額制サービス(SVOD)が引き続き好調に推移するとみられることに加え、都度購入(EST)や都度課金サービス(TVOD)の拡大も見込まれる。その市場規模は2024年には3,440億円まで成長し、順調に増加基調をたどると推定されている。


2019年は日韓関係が冷え込んだ年となった。日本政府観光局(JNTO)によると、2019年10月の韓国からの訪日客数は、前年比65.5%の19万7,281人に大幅減少し、2019年の累計では同25.9%減少した。2018年には訪日外客数の総数のうち24.1%を韓国からの訪日客数が占めていたが、2019年にはその割合が17.5%まで減少した。関係悪化による影響がヒトの動きに顕著に表れたのである。その後、新型コロナウイルスによる入国制限により、世界的にヒトの動きが止まることとなる。


一方、韓国政府はK-POPや映画、ドラマなどの「韓流」コンテンツによる経済波及効果の実績が2019年に約123億ドル(約1兆3,200億円)になったと発表している。2016年の約76億ドルから3年で6割増である。また韓国政府は「韓流」を政府公認の「国家ブランド」と位置付け、関連省庁による新戦略を取りまとめるなど、支援に力を入れている。まさに「韓流」はブームの枠を超え、韓国経済の重要コンテンツに成長していた。


現在、日本ではアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が日本での映画史上最速で興行収入100億円を突破するなど、こちらも空前のブームとなっている。


新型コロナウイルスによる閉塞感が漂うなか、新しい生活様式や5Gを背景に、両国のエンターテインメント、とりわけ映像コンテンツの果たす役割はますます大きくなるであろう。

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