急増した休業者数、就業問題はこれから本格化

総務省が1月29日に発表した「労働力調査」によると、2020年平均の就業者数は6,676万人で、前年と比べて48万人減少した。就業者数が減少するのは2012年(13万人減)以来、8年ぶりのことであった。また、雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数は3,539万人(36万人増)だった一方、非正規の職員・従業員数は2,090万人(75万人減)となっていた。


2020年に経済活動が大幅な制約を受けてきたなかで48万人減にとどまったのは、雇用調整助成金の特例措置の実施など、政府によるさまざまな雇用維持策が行われたことに加えて、各社も懸命の努力を重ねている結果ではないだろうか。


一方で、気になるのは休業者の増加である(図)。就業者のうち休業者数は、2020年で256万人と、前年より80万人増加した(8年連続の増加)。2020年の就業者数は、比較可能な1968年以降で過去最多、80万人の増加も過去最大の増加幅であった。

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労働力調査では休業者は次のように定義されている。仕事を持ちながら、調査期間中に少しも仕事をしなかった者のうち、(1)雇用者で、給料・賃金(休業手当を含む)の支払いを受けている者または受けることになっている者、(2)自営業主で、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない者。


以前、当コラム(「新型コロナウイルスが就業状態に与えた影響」)で述べたように、休業者数は2020年4月には597万人に達していた。休業者の進路としては、(a)引き続き休業者に留まる、(b)従業者に戻る、(c)完全失業者になる、(d)労働市場から退出し非労働力人口となるか、のいずれかである。


つまり、休業者のなかから一定程度の人が職を失い、あるいは働くこと自体をやめてしまうことになるのである。人口が減少している日本において、休業者の存在はもっと注目されるべきであろう。


現在も依然として新型コロナウイルスの猛威は続いているが、雇用の深刻化はこれから本格的に訪れるとみられる。その時、貴重な人材を生かせるか否かは、今後の日本経済に大きな影響を与えることになる。そのために、政府・企業・国民ともに新型コロナウイルスの収束という大きな目標に向けて、十分な情報・エビデンスを基にした冷静な議論・行動が肝要となる。

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