ロボットは雇用を促進する?最新の研究で判明した「新事実」
この社会構造の変化に対応するため、ロボット技術の開発・活用が進んでいる。国際ロボット連盟(IFR)の発表[2]によれば、2019年における世界の産業用ロボットの導入台数は約37万台で、過去3番目の高水準を記録した。そのうち日本の導入台数は中国に次ぐ世界2位となっている。
こうした製造現場のほか、「医療・福祉・保健衛生」や「飲食店」などサービス業界においてもロボットの活用が増加している。IFR[3]によると2018~2019年の「サービスロボット」の販売額は全世界で32%増となった。なかでも、高齢化によって年々医療や介護のニーズが増加しているなか、それを担う人材が年々減っていくという問題が躊躇になってきた介護なども含めた「医療・福祉・保健衛生」業種においてロボットの注目度が高まっている。
このようにヒトの代わりに作業を行うロボットが活躍をみせているなか、ロボットがヒトの仕事を奪うのではないかという懸念が度々あがってくる。しかし、2021年1月、そんな懸念を覆す研究結果が発表された[4]。
当研究は2017年における日本の860件の介護施設のデータを用いて、介護ロボットの活用による影響を分析したところ、ロボットの導入は、柔軟な雇用契約で雇われる場合、介護福祉士や看護師など従業員の数を増加させるという結果が得られたのである。また、ロボットの導入によって従業員の離職問題が緩和されたことも明らかになった。その原因として、ロボットの活躍によって従業員の負担が軽減されることがあげられた。一方、ロボットの導入は従業員の月給を減少させるといった結果も得られた。その理由は、介護施設で最も導入されている「見守りロボット」の活躍により従業員の夜間勤務が減少するからだと推定されている。総じて、当研究はロボットの活用によりヒトは仕事を奪われるのではなく、より柔軟な働き方が促進され、雇用の増加につながると結論づけた。このような研究結果はほんの一例に過ぎないが、今後のロボット活用に関する政策などの参考となり得るであろう。
深刻化する労働人口の減少問題に加え、今般の新型コロナウイルスの感染拡大による「非接触」ニーズの高まりを背景に、ロボットの普及はますます加速すると予想される。人間とロボットが良好な関係を築く未来を創るためにも、上述のような研究や、さらなるロボットの開発が必要不可欠である。
[1] United Nations Population Division, World Population Prospects 2019
[2] International Federation of Robotics (IFR) Press Release, September, 2020
[3] International Federation of Robotics (IFR) Press Release, October, 2020