米国の経済対策が与える日本の景気への行方
2月25日にNBER(全米経済研究所)が発表した2020年10~12月期の実質GDP(国内総生産、2012年連鎖価格)は18兆7,839億ドル(前期比+1.0%)であった。7~9月期(同+7.5%)から2四半期連続のプラス成長となっており、新型コロナウイルスによる危機前(2019年10~12月期)の97.6%の水準まで回復している。その差は4,701億ドルであり、1.9兆ドルにのぼる金額は財政出動による経済過熱が懸念されるほどの規模と言える。
今回の追加経済対策にはワクチンや医薬品の供給支援、失業給付上乗せ、中小企業支援などが含まれるが、その柱は国民への1,400ドルの現金給付である。しかし、米国はすでに2回の給付で一人当たり1,800ドルを支給している。名目GDPの11%に相当する給付金は米国民のなかで積みあがっており、新型コロナウイルス感染症が収束に向かい経済活動が強まってくれば、消費が必要以上に過熱する可能性がある。
こうした見通しは金融市場において敏感に反応した。もともと金融緩和が進められ、ワクチン接種の開始や経済対策などで米国景気の回復期待から株価が上昇していた。しかし、今回の1.9兆ドルを超える追加経済対策が加わったことで米国の景気過熱が警戒され、米国債の長期金利が一気に上昇(国債価格の下落)した。
金融緩和と低金利という両輪で拡大していたが、大規模な財政出動の可能性が高まったことでその一角が崩れた格好である。米国の長期金利が上昇する一方で、株式市場からは資金が流出し株価が大きく下落、さらに米国株式市場との連動性が高くなっている日本の株価も大幅に下落することとなった。
ここまでの市場動向は、経済学のテキスト通りに推移している。しかし、問題はここからであろう。本来、米国の景気回復および長期金利の上昇は、ドル高・円安をもたらす要因となり、日本株にとっては輸出企業を中心にプラスに働くはずである。
また、金融市場の動揺が長引き金融システムへと波及するようであれば、日本銀行は金融システムを安定化させる政策を打ち出す可能性がある。もちろん、短期的な変動で金融政策が影響されることがあってはならないが、しっかりとカバーする必要があろう。
さらに米国議会の動向も注視する必要がある。上院(定数100)は現在、民主党(同一会派の無所属含む)と共和党がともに50議席で並んでいる。しかし、採決が可否同数の場合、議長役の副大統領が決定投票を行うため、民主党が上院でも実質的に過半数を握っている状況である。
バイデン政権による追加経済対策の行方は、今後の日本経済に対しても影響を与える可能性が高い。そのための情報収集は欠かせないと言えよう。