景気DIは持ち直しの動きも業種間で広がる温度差
2月の景気DIを前年同月比でみると、下落幅が2.9ポイント下回る水準まで縮小してきており、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻りつつある。特に、『製造』(前年同月比0.7ポイント増)は、2018年9月(50.0、同0.6ポイント増)以来、2年5カ月ぶりに前年同月の水準を上回った。『製造』の業種別にみても、「化学品製造」(同5.1ポイント増)や「輸送用機械・器具製造」(同3.8ポイント増)といった自動車関連の業種を中心に、12業種中6業種で前年を上回る水準まで持ち直した。
しかし、現状では景況感が一様に持ち直しているとは言い難い。
『サービス』(同8.6ポイント減)は、前年からの減少幅が最も大きい(『その他』を除く)。1月に2度目の緊急事態宣言が発出され、2月以降も10都府県で延長されたなか、「飲食店」(同19.5ポイント減)や「旅館・ホテル」(同18.8ポイント減)といった個人向けサービスの業種を中心に、前年同月を大きく下回る水準が継続した。『サービス』は、有線テレビジョン放送が堅調な「放送」(同3.7ポイント増)を除く14業種で前年同月を下回った。
また、『サービス』は業種間での景況感に温度差がみられる。上記の図は、『サービス』15業種の景気DIの標準偏差を月別に算出したものである。2020年に入り、『サービス』15業種の標準偏差は、新型コロナウイルスの感染者数の増加や緊急事態宣言の発出に合わせて大きくなっている。一方、『サービス』を除く36業種では、業種間の標準偏差はほぼ横ばい傾向で推移しており、大きな変化は表れていない。個人向けサービスなどの特定の業種に対する新型コロナウイルスの影響の甚大さが、こうしたデータからもうかがえる。
今後、景気は緩やかに持ち直していくと見込まれるが、その回復過程は「V字型」や「L字型」ではなく、業種によって二極化傾向となる「K字型」になるとの声もある。そのようななか、今後の国内経済の回復に向けては一律的な施策ではなく、特定の業種に向けたより具体的な施策の実行が求められよう。