テレワークの普及で企業の各種手当の見直し進む
政府は「世界最先端IT宣言・官民データ活用推進基本計画」(2017年5月30日閣議決定)において、テレワークの普及に関するKPIのひとつとして、2020年に雇用型テレワーカーの割合を2016年度比で倍増(7.7%→15.4%)させるとしていた。新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークの導入が進み、はからずも目標を達成した格好だ。
テレワークなど働き方の変化にともない、企業が支給する各種手当にもさまざまな変化がみられている。その一例が通勤手当であろう。通勤手当は企業の92.3%が支給しており、「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」(68.6%)や「技能手当、技術(資格)手当など」(50.8%)、「住宅手当など」(47.2%)を含めて、企業の代表的な手当と言えよう(厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」(2020年10月30日公表))。
こうしたなか、通勤手当をこれまでの定額支給(定期代など)から実費支給に切り替える企業が増えている。企業側からみると、通勤手当を実費精算にすることで出社日数によっては支出を抑えることも可能になる。
他方で、労働者側からみると別な側面が浮かび上がる。通勤手当などの諸手当は社会保険料を算出する報酬月額に含まれるため、通勤手当の受け取り額減少により毎月の社会保険料が減少することも起こりうる。結果として、将来の老齢年金の受給額が減少する可能性もある。さらに老齢年金だけでなく、病気やケガによって生活や仕事などが制限された場合に給付される障害年金や、国民年金または厚生年金の被保険者または被保険者であった方が亡くなったとき家族が受け取る遺族年金にも影響するかもしれない。
もちろん、実費精算にともない従業員が不利益を受けないよう、在宅勤務手当など新たな手当を導入する取り組みを進めている企業も多い。また企業側としても実費精算による経理部門の処理増大といったコスト負担の増加が生じる可能性もある。新しい働き方に対応する社内ルールを整備する必要性が高まっているなかで、労使双方で十分な理解を図ることが重要となろう。
[1]「雇用型テレワーカー」とは、社内規定などでテレワーク等が規定されている、または会社や上司などからテレワーク等を認められている雇用型就業者のうち、テレワークを実施している人のこと。