COVAXファシリティーにみる世界的支援の枠組み
東京大学の経済学者の研究グループがワクチン接種の進みと感染者数・経済損失を試算。その中で、首相が目標とする1日100万回近くのワクチン接種が実施された場合、東京都では2021年5月31日に緊急事態宣言が解除され、一旦感染者数は増えるが、社会全体にワクチンの効果が現れ始め、9月頭から感染者は減少。12月末には感染者数はゼロに近づくとしている。他方、1日51万回のワクチン接種の場合、緊急事態宣言解除後、感染者数は徐々に増加し、7月下旬には再び緊急事態宣言が発出される状況になると予想。また今後1年間の経済損失については、接種回数が1日100万回なら1兆8千億円、51万回なら3兆5千億円になると見込んだ(5月4日時点の試算)。ワクチン接種の進み具合が経済回復の「カギ」になるであろう。
少し話は遡るが、2020年4月、WHO(世界保健機関)やGaviアライアンス、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)が主導し、「COVAXファシリティ(COVID-19 Vaccine Global Access Facility)」が創設された。「COVAXファシリティ」は、新型コロナウイルスのワクチンを世界各国で共同購入して分配する国際的枠組みである。日本は早期から参加を表明しており、2021年1月22日時点では190カ国が参加を表明している。
世界では新型コロナウイルスの感染予防策の基本とされている「石鹸と水による手洗い」が自宅でできない環境にいる人たちが、世界人口の40パーセント(30億人)に及ぶと推定されている。また紛争などにより約8千万人の人たちが、難民キャンプなどでの密集した生活をしており、感染拡大が避けられない状況に置かれている。このような途上国にワクチンを供給する世界規模での枠組みが、WHOのパンデミック宣言から1カ月後に創設されていたことは、世界にとって極めて重要であったと感じる。2021年4月8日現在、「COVAXファシリティ」は約3,800万回分のワクチンを102カ国へ供給している。
国内においても、今後の「カギ」となるワクチン接種がスムーズに進むよう、企業も力を合わせ社会全体で取り組んでいける仕組み作りが求められる。