寛容な社会が新たな価値観を生みだす
全国各地で新型コロナウイルスの影響が依然として続いている。新規感染者数や重症者数が高止まるなか、まん延防止等重点措置や3回目の緊急事態宣言が延長された。また、従来型より感染力が強いとされる変異型のウイルスが広がりつつあり、引き続き警戒感を緩めることはできない。一方、東京や大阪などでは大規模なワクチン接種センターが設置され、ワクチン接種が加速するなど良いニュースもある。
ワクチンの接種はもちろんのこと、加えて感染症予防には人と人との接触削減も効果的である。政府や行政は、出勤者を7割削減することを目標に掲げ、企業に呼び掛けているところである。しかしながら、帝国データバンクが公表した「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2021年4月)」によると、業務時間全体に占めるテレワークの時間が7割以上となっている企業は、職種を問わず5%程度となっていた。都道府県別にみても、「東京」が13.7%(内勤職)と1割程度で最高となっており、なかなか進んでいない状況にある。
他方で、個人の感染症対策を振り返ってみると、政府や行政に強制されることなく、毎日のマスク、手洗いや手指の消毒といった感染予防に加え、節度ある自粛生活の継続を自主的に行っている。総じて、日本人の社会的道徳観や個々の危機意識は非常に高いといえる。
個々の危機意識は高い半面、企業・団体となるとやや危機感が薄れる結果となるのは何故であろうか。テレワークの浸透の低さをはじめ、緊急性をともなわない対面での会合や懇親会などが一部で実施されるなど個人と比べるとやや低いのではと考えてしまう。
企業に属する立場であると自分の意思で行動することに制限がかかってしまう。自分だけの都合で行動することに対し、周りの人や企業に迷惑をかけられないという意識が強く生じているのかもしれない。
このマインドを変化させることができれば、世の中は変わっていくのではないだろうか。テレワークの実施一つとっても、多少の不便や迷惑が生じても許容できる企業・団体が多く現れることが望ましい。少しだけ寛容な社会となることで、新しい価値観が生まれ、飛躍のチャンスが訪れるはずである。
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