経済指標の「前年同月比」に注意

世界的に新型コロナウイルスよる影響が続いているものの、2020年後半以降、日本国内の景況感は多少上下に変動しつつも緩やかな回復傾向となっている。2021年6月の景気DIは39.1(前月比1.6ポイント増)と2カ月ぶりに改善した。6月20日に沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言が解除され、『サービス』『小売』など個人消費関連が上向いた。また、アメリカ、中国など海外経済の力強い回復が続くなか、自動車や半導体関連を中心に輸出も回復傾向にあり、『製造』や『卸売』なども上向いた。


そうしたなか、直近の経済指標を見る際に注意したいのが前年同月比の指標である。TDB景気動向調査において、売り上げDIや生産・出荷量DIなどの指標では、前年同月と比べた変化を企業に尋ねている。両指標ともに新型コロナウイルスの影響などで2020年の5月まで低下し、6月以降は徐々に上昇している。


直近では、2021年6月の売り上げDIは48.5、生産・出荷量DIは48.0と前月の水準からそれぞれ上昇した(図1)。しかし、2021年6月時点においても、売り上げDIおよび生産・出荷量DIの両指標ともに判断の目安となる50を依然として下回る。つまり、2020年6月と比べて売り上げ(生産・出荷量)が増加した企業より、減少した企業の方が多かったということを示している。新型コロナウイルスの影響で大きく悪化した2020年より持ち直しつつある企業がいる一方で、売り上げや生産・出荷量がさらに悪化している企業も存在しているのである。


【図:売り上げDIおよび生産・出荷量DIの推移】


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観光庁の宿泊旅行統計など一部の経済指標では、新型コロナウイルスによる同様の理由から、前年同月比だけでなく2年前の2019年同月比も算出している。2020年からの反動もあり前年同月から大きく変動している経済指標も多い。しかし、前年同月比の指標を見る際には前年同月に何があったのかなど、その変化を慎重に見極める必要があろう。

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