日本のSDGs達成度、スコアは改善も世界での順位は低下傾向

最新のSDGs達成度ランキング[1]が公開された。日本の順位は165カ国中18位と、2019年の15位、2020年の17位から2年連続で順位を下げており、同ランキングが初めて公開された2016年に並び最も低い順位である。2020年に引き続きアジアでは1位を維持しているが、世界での順位は徐々に低下する傾向にある。ただし、達成状況を示す総合スコアをみると、日本のスコアは3年連続で少しずつではあるが上昇している。これは近年国内でSDGsに関する情報発信やSDGsへの取り組みが活発してきたからであろう。とは言ってもその勢いは世界と比べて弱いということから、順位を落とす結果となったと考えられる。


さて、日本のSDGs達成の足かせとなっている要因は何であろうか?


SDGsで掲げられている17目標のうち2020年に引き続き「大きな課題が残っている」とされているのは『目標5:ジェンダー平等を実現しよう』『目標13:気候変動に具体的な対策を』『目標14:海の豊かさを守ろう』『目標15:陸の豊かさも守ろう』『目標17:パートナーシップで目標を達成しよう』である。昨今日本において問題視されている男女平等に関する目標(目標5)のほか、SDGs目標達成への共創・協業などに関する目標(目標17)の進捗は前年比「適度に改善」となっており、明るい兆しが見えつつある。一方で、陸上生態系保護・回復などに関する目標(目標15)は後退した。当目標の評価項目を詳細にみると、とりわけ「生物多様性の保全に重要な陸地・淡水の平均保護面積」は前年の「目標達成している」というレベルから「大きな課題が残っている」に下がってしまった。

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他方、帝国データバンクが2021年6月に実施した「SDGsに関する企業の意識調査(2021年)」によると、企業が現在力を入れて取り組んでいるSDGsの目標に関して、「目標15:陸の豊かさも守ろう」は6.5%と前年の4.9%から増加したものの1桁台にとどまっており、下から4番目に低い。さらに、当目標を今後最も取り組みたい項目とした企業の割合はわずか0.9%にとどまり、最も低くなった。これらを踏まえると、大きな課題が残っているにもかかわらず進捗が後退傾向にあり、かつ国内企業の取り組む割合が低い陸上生態系保護・回復などに関する当目標は、今の日本にとって達成することが最も難しい目標であると考えられる。


「SDGsに関する企業の意識調査(2021年)」によれば、「SDGsに積極的」な企業は2020年時点での調査から15.3ポイント増の39.7%と大きく増加しており、経済・社会活動に深く関わる民間企業のSDGsへの関与が加速していることが見て取れた。今般の新型コロナウイルスの感染拡大により、SDGsの重要性を認識できた例は少なくない。しかし一方で、SDGsを認知するようになったもののなかなか取り組む余裕がない企業も多いであろう。新型コロナウイルスの感染が収束し、企業活動の正常化が進むにつれて、日本のSDGs達成度ランキングが大きく上昇することに期待が膨らむばかりである。


[1]The Sustainable Development Solutions Network (SDSN),Sustainable Development Report 2021
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