猛威を振るうデルタ株
デルタ株とは、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスの変異株であり、2020年後半にインドで初めて検出された。WHO(世界保健機関)では、デルタ株を最も警戒度が高い、VOC(懸念される変異株)に位置づけており、デルタ株が報告されている国や地域は2021年8月10日現在で142に上る。またデルタ株の感染力について、日本感染症学会の発表によると、基本再生産数(一人の感染者が何人に感染させるかを示す指標)が、従来の新型コロナウイルスでは2~3とされていたが、デルタ株は7~8になる。国立感染症研究所の発表資料には、カナダのトロント大学のグループによる研究で、デルタ株は従来のウイルスなどに比べて入院するリスク、ICU入室リスク、死亡リスクがいずれも増加していたとの報告が掲載されていた。
一方、総務省消防庁が発表した、緊急搬送困難事案に関わる状況調査(2021年8月17日)によると、2021年8月9日(月)~8月15日(日)における搬送困難事案は、3,361件で前週より464件増加(16%増)し、過去最多となった。このうち、コロナの疑いでない事案は1,682件にも上っている。平常時なら守れたかもしれない命が守れない危険は、他人事ではなくなっているのである。
2021年8月20日、対象地域が13都府県に拡大された緊急事態宣言。菅首相は医療体制の構築、感染防止、ワクチン接種という3つの柱からなる対策を表明した。
しかし、前述したアメリカのように、ワクチン接種が進んでいる国においても、デルタ株による感染拡大が確認されており、かつてない感染力を持つデルタ株に対し、政府においては、今後の感染防止において、更なる対策が求められる。また同時に、私たち一人一人においても、変化を続ける新型コロナウイルスを正しく理解し、正しく行動することがより一層求められている。