猛威を振るうデルタ株

世界中で新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株による感染者が急増している。日本では一日の感染者数が2万5,000人を3日連続(2021年8月21日現在)で超えており、東京都へ4度目の緊急事態宣言が発出された時点(2021年7月12日)での全国の感染者数1,504人と比較すると、急激な感染拡大がよくわかる。国立感染症研究所の推計では、首都圏で感染全体の95%、関西圏で80%以上がデルタ株に置き換わっている。また、ワクチン接種が進んでいるアメリカでは、8月21日時点で人口の51.1%が接種を終えているが、デルタ株による感染が拡大しており、新規感染者の数は2021年1月のピーク時を上回っている。


デルタ株とは、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスの変異株であり、2020年後半にインドで初めて検出された。WHO(世界保健機関)では、デルタ株を最も警戒度が高い、VOC(懸念される変異株)に位置づけており、デルタ株が報告されている国や地域は2021年8月10日現在で142に上る。またデルタ株の感染力について、日本感染症学会の発表によると、基本再生産数(一人の感染者が何人に感染させるかを示す指標)が、従来の新型コロナウイルスでは2~3とされていたが、デルタ株は7~8になる。国立感染症研究所の発表資料には、カナダのトロント大学のグループによる研究で、デルタ株は従来のウイルスなどに比べて入院するリスク、ICU入室リスク、死亡リスクがいずれも増加していたとの報告が掲載されていた。


一方、総務省消防庁が発表した、緊急搬送困難事案に関わる状況調査(2021年8月17日)によると、2021年8月9日(月)~8月15日(日)における搬送困難事案は、3,361件で前週より464件増加(16%増)し、過去最多となった。このうち、コロナの疑いでない事案は1,682件にも上っている。平常時なら守れたかもしれない命が守れない危険は、他人事ではなくなっているのである。


2021年8月20日、対象地域が13都府県に拡大された緊急事態宣言。菅首相は医療体制の構築、感染防止、ワクチン接種という3つの柱からなる対策を表明した。


しかし、前述したアメリカのように、ワクチン接種が進んでいる国においても、デルタ株による感染拡大が確認されており、かつてない感染力を持つデルタ株に対し、政府においては、今後の感染防止において、更なる対策が求められる。また同時に、私たち一人一人においても、変化を続ける新型コロナウイルスを正しく理解し、正しく行動することがより一層求められている。

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