SDGs景気DI(2021年11月)

SDGsに積極的な企業の景気は引き続き良い傾向に
~ SDGsに積極的になることで景況感の改善につながる~

【要約】

  1. SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに積極的な企業の景況感『SDGs景気DI(総合)』を算出したところ、『SDGs景気DI(総合)』はSDGsに積極的でない企業の景況感より良好な傾向が続いていることが明らかになった。また、規模別にみると「大企業」「中小企業」ともに2020年1月~2021年11月のほとんどすべての時点で『SDGs景気DI(総合)』がSDGsに積極的でない企業の景気DIを上回っていた。
  2. 企業がSDGsに積極的であることと景況感との間の因果関係について分析したところ、SDGsに積極的になることによって、景気DIの改善につながっていたという結果が示された。
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昨今、重要な経営指針としてSDGsを取り入れ、いわゆる「SDGs経営」を行う企業が増えている。帝国データバンクが2021年6月に実施した「SDGsに関する企業の意識調査(2021年)」によると、『SDGsに積極的』な企業は39.7%で前回調査(2020年6月)より15.3ポイント増加した。しかし、特に中小企業からは、SDGsへの取り組みが企業のパフォーマンスにマイナス影響を及ぼすことを懸念する声も聞かれており、引き続き中小企業ではSDGsに積極的な企業の割合が大企業を大幅に下回る結果となった。そこで、本レポートではSDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感を捉えるとともに、両者の因果関係について分析を行った。
  1. SDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感、引き続きそうでない企業の景況感を上回る
  2. 既述の「SDGsに関する企業の意識調査」と「TDB景気動向調査」から得られた回答データより、「SDGs景気DI」「潜在SDGs景気DI」、および両者の統合指標である『SDGs景気DI(総合)』を算出した[1]。その結果、2021年11月における『SDGs景気DI(総合)』は44.6となり、SDGsに積極的でない企業[2]の景気DI(42.7)を1.9ポイント上回っていることが明らかになった。2020年1月以降でみても、『SDGs景気DI(総合)』はSDGsに積極的でない企業の景気DIを上回って推移しており、SDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感はそうでない企業より良好な傾向が続いている(図1)。


    規模別にみると、2020年1月以降、「大企業」「中小企業」[3]ともに『SDGs景気DI(総合)』がSDGsに積極的でない企業の景気DIをほとんどすべての時点で上回っていた(図2)。

    【図1 SDGs景気DI(総合)の推移】
    p2021121501.png
    【図2 SDGs景気DI(総合)の推移 ~規模別~】
    p2021121502.png

  3. 企業がSDGsに積極的な結果として景気DIの改善につながっていた
  4. 「SDGsに関する企業の意識調査」(2020年6月および2021年6月調査)と「TDB景気動向調査」(2020年6月および2021年6月調査)から得たデータをもとに差分の差分 (Difference-in-Differences:DiD)法[4]を用いて、企業がSDGsに積極的であることと景況感との間の因果関係について分析した。


    ここで、同一企業の2020年6月と2021年6月の2時点におけるデータを用いる。2020年6月の時点でSDGsに積極的ではなかったが、2021年6の時点でSDGsに積極的である企業を「介入群」とし、2時点ともSDGsに積極的でない企業を「コントロール群」と、2つのグループに分けた。また、2020年6月のデータを「介入前に測定されたデータ」とし、2021年6月のデータを「介入後に測定されたデータ」とした。有効回答企業は5,094社だった。


    以上の調査データを用いて、以下の回帰分析を行った。

    Yi=β01Treatedi2Postperiodi3(Treatedi×Postperiodi)+ei


    ここで、Yは景気DI、Treatedはグループのダミー変数(介入群1、コントロール群0)、PostPeriodは時間のダミー変数(介入後1、介入前0)、Treated×PostPeriodは差分の差分マージン効果、eは誤差項、iは企業を表す。


    分析の結果、差分の差分マージン効果(Treated×Postperiod)は5%水準で有意に正の影響を与えていた(表1)。つまり、企業がSDGsに積極的になる結果として景気DIの改善につながった、という因果関係を示す結果が得られた。


    【表1 分析結果】
    p2021121503-1.png

    まとめ
    本レポートでは、帝国データバンクが実施した調査からSDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感『SDGs 景気 DI(総合)』を算出したところ、SDGsへの取り組みに積極的な企業の景況感は引き続きSDGsに積極的でない企業より良好な傾向にあることが明らかになった。大企業・中小企業を問わず同様な傾向がみられている。


    また、企業がSDGsに積極的であることと景況感との因果関係について分析したところ、SDGsに積極的になったことによって景況感が改善したという結果が示された。


    企業はSDGsに取り組むことで、知名度やイメージが向上し、取引の活性化や人材確保・定着率の向上などといった効果が期待できる。それが企業の景況感や業績の改善につながっていくと考えられる。「SDGs景気DI」は、SDGsのその効果がきちんと発揮されているかを確認するためのツールとなりうる。

[1] 「SDGs景気DI」は、SDGsに関する企業の意識調査において「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」と回答した企業の景況感、「潜在SDGs景気DI」は、同じく「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」と回答した企業の景況感を表す。
[2] SDGsに積極的でない企業は、『SDGsに関する企業の意識調査』において「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」「言葉は知っているが、意味もしくは重要性を理解できない」「言葉も知らない」のいずれかを選択した企業の景況感を表す。
[3] 「中小企業」は小規模企業を含む。
[4] 差分の差分法とは、ある介入による成果変数への効果(因果関係)を検証するために、介入の影響を受けたグループ(介入群)と受けていないグループ(コントロール群)の介入前後での成果変数の変動を比較するものである。この分析法により、介入による効果から時間経過による効果を取り除くことで、介入の効果のみ測定することが可能になる。ここでの介入は「SDGsに積極的になる」とする。
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