ウクライナ情勢で仕入単価DIは過去最高の水準に?
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いています。3/18現在、ウクライナとロシア間で4回目の停戦交渉が実施されていますが、合意に達成するかは不透明な状況です。そうしたなか、TDB景気動向調査でも、先行きに対してウクライナ情勢を懸念する企業の声が増加しています。
企業の声から作成した共起ネットワーク図】
上図は、2022年2月調査に寄せられた、先行きの景況感に関する自由回答のデータを、ロシアがウクライナに侵攻した2/24の前後で分け、それぞれのデータでテキストマイニング分析をした結果です。テキストマイニング分析は、膨大なテキストデータを定量的に分析するための手法です。近年、アンケートの自由回答データやTwitterなどのSNSへ書き込まれたテキストデータ、有価証券報告書の事業等のリスク・・・等に関するテキストマイニング分析も活発になってきています。
上記の共起ネットワーク図は、テキストデータの中で頻出度合いが高い単語(円の大きさが、その単語の頻出度合いを表す)を抽出し、その単語間での関係の強さをその距離で表しています。例えば、「2/23までの回答」で"新型コロナウイルス"という単語の周辺には"収束(終息)"や"感染"などの単語が表示されています。これらの単語が同じコメントの中で共に多く用いられていることは、想像に難しくないでしょう。
上図右にある2/24以降(ロシアがウクライナへ軍事侵攻したあと)のデータで作成した共起ネットワーク図をみると、企業のコメントのなかで"ウクライナ""ロシア"といった単語が多く登場していることがわかります。また、"ウクライナ"や"ロシア"などの単語の周辺には、"原油""高騰""エネルギー"などの単語も表示されています。企業がウクライナ情勢とあわせて、原油やエネルギー、原材料価格の上昇を大きく懸念している様子がうかがえます。
3月以降、原油価格は1バレル100ドルを大きく上回る推移が続いており、国内でのガソリン価格も3/14時点で10週連続の値上がりとなっています。そうしたなか、日本銀行が3月10日に発表した2月の企業物価指数(速報値)は110.7と前年比9.3%増となりました。前年同月からの増加率としては、1980年12月以来の高い伸びとなり、なかでも輸入物価指数の増加率は同34.0%増と大幅な上昇となっています。
さらに、3月18日に総務省が発表した2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は同0.6%増。企業物価指数と比べ増加率は小幅なものの、携帯電話の通信料金引き下げの影響を除けば、上昇率は2.0%を超える水準となっています。4月以降は上述の携帯電話の通信料引き下げの影響がなくなり、増加幅がより大きくなることが見込まれています。
TDB景気動向調査では企業に対して毎月、原材料などの仕入単価が前年と比べて上昇(低下)したかを尋ねています。その設問から作成している仕入単価DIは2022年2月時点で69.1まで上昇し、過去最高の水準となった2008年7月(69.6)に近づきつつあります。
ウクライナなど、国際情勢に不透明感が漂うなか、3月以降企業の仕入単価DIは過去最高の水準を超えることが想定されます。今後は、販売単価への転嫁や賃金動向への影響、スタグフレーション(景気後退とインフレが同時進行すること)リスクの高まりが懸念されます。