全員出社が当たり前の社会から変化、3割超の企業で出社抑制を実施
政府から「新しい生活様式」の実践例が公表されて、2022年5月4日で早2年が経過します。公表資料の実践例のうち働き方の新しいスタイルとして、以下の項目が挙げられています。
☑ テレワークやローテーション勤務
☑ 時差通勤でゆったりと
☑ オフィスはひろびろと
☑ 会議はオンライン
☑ 対面での打合せは換気とマスク
新型コロナウイルスの流行前は、働き方改革が叫ばれるなか、重要と感じながらもなかなか取り組めていなかったのではないでしょうか。
しかし最近では、在宅勤務をはじめとするテレワークの進展を少なからず実感しているビジネスパーソンも多いことでしょう。
実際に新型コロナウイルスの第6波の最中の2022年3月に出社率[1][2]について帝国データバンクが調査したところ、6割を超える企業が「全員出社(100%)」でした。他方、なんらかの「出社抑制」を行う企業は35.9%となっています。
出社率の濃淡は、業種などによって差異がみられますが、特にここでは都道府県別にみてみます。
「全員出社(100%)」とする企業の割合は、「高知」(88.2%)、「山形」(82.5%)、「島根」(82.0%)など地方部を中心に高くなっていました。一方で、唯一3割台の「東京」(37.6%)や「大阪」「京都」(ともに55.1%)、「神奈川」(56.7%)など大都市圏を中心に全員出社の割合は低く、働き方の新しいスタイルが定着しつつあるように見受けられます。
とりわけ、全員出社(100%)の割合が最も低い東京は、急速に新しい働き方が広がったと言えそうです。
東京都が実施した調査によると、2017年(平成29年)の従業員30人以上の企業におけるテレワークの導入状況[3]は、「導入済み」が6.8%だった一方、「導入予定なし」が80.2%と8割にのぼっていました。
翌2018年でも「導入済み」19.2%、「導入予定なし」59.6%でしたが、直近2021年には「導入済み」65.7%、「導入予定なし」28.7%へと変化しています。
2022年3月の出社率を調べてみると、全員出社(100%)とする企業は全国で約6割となりました。数年前まで多くの企業で、ほぼ全員出社が当たり前という社会を思い出すと大きく変化したと言えるのではないでしょうか。
マイナスの側面が大きい新型コロナウイルスの影響、データを通してみると皮肉なことに、なかなか進まなかった働き方改革を急速に進めた一因になったとみることもできそうです。
[1] 本調査は、TDB景気動向調査2022年3月調査とともに行った
[2] 出社率の定義は、全体の従業員数のうち事業所などのオフィス、店舗、工場、作業現場などへ実際に出社する割合としている
[3]東京都産業労働局「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」(2021年)