まだまだ続く「値上げの波」、特に食料品関連企業は67.1%が値上げ予定
飲食料品や生活用品から光熱費まで、私たちの日常生活に直結する商品の値上げが相次いでいます。
新型コロナウイルス下の供給制約と需給の崩れに加え、ロシアのウクライナ侵攻やそれにともなうロシアへの経済制裁による原材料価格や、輸送費などに影響を及ぼす原油価格の高騰が企業のコストアップにつながり、多くの企業で値上げが相次いでいます。
そこで、気になるのはこの値上げの動きはいつまで続くかです。
帝国データバンクが発表した『企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート』によると、2022年4月以降1年以内で商品・商材などを「値上げした」もしくは「値上げする予定」の企業は43.2%にのぼりました。
なかでも、「食」に関する業種 では、67.1%が今後1年以内に値上げを行う予定と回答。特に飲食料品メーカーにおける割合は73.1%と突出して高く、2022年7~9月でも2割超の企業が値上げを予定しています。
その背景に、原油価格の高騰にともなう輸送費の増加だけでなく、小麦価格の急騰による企業の仕入単価の上昇があります。実際2022年4~9月における輸入小麦の民間への売渡価格は前期より17.3%引き上げられ、価格は過去2番目の高さとなりました。
これは一見、ともに小麦大国であるロシアとウクライナ情勢による影響にみえますが、実はロシア・ウクライナ情勢の影響は一部しか反映されておらず、2021年の北米の干ばつが主因になっています。次の政府売渡価格の改定時である10月はこうしたウクライナ情勢による影響が本格的に反映されるほか、昨今の円安による影響も加わることで、小麦価格はさらに高騰するでしょう。
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などにともなう原材料価格の一段の高騰に加え、人手不足や円安などによるコスト増は企業の収益力に大きな影響を及ぼす可能性があるなかで、値上げの波は今後も続くと考えられます。
値上げによる消費者の購買意欲の低下が懸念されるなか、低所得世帯の家計負担を減らすための支援策はもちろん、働く人全体の"賃上げ"の必要性が増してきます。政府は賃上げを行った企業を対象とする「賃上げ税制」を強化したほか、企業が賃上げしやすい環境を整備するために生産性向上支援策を講じるなど、さまざまな政策を打ち出しました。政府にはこうした政策の効果を検証し、より効果的なものを導入していくことが求められます。そして、官民が一体となって、企業の生産性向上並びにイノベーションを促す投資を行うことで企業業績を上げ、賃上げにつなげることも肝要です。