世界のSDGs達成度ランキングから「ビジネスチャンス」を読み取る
2022年の世界各国のSDGs目標達成状況やランキング[1]が発表されました。日本は163カ国・地域中19位と、3年連続で順位が低下し、同ランキングが初めて公開された2016年以降最も低い順位となりました。2021年に引き続きアジアでは1位を維持しているものの、世界での順位は徐々に低下する傾向にあります。
日本国内でSDGsへの関心が日に日に高まってきているにもかかわらず、順位を引き下げている要因は何でしょうか?
同ランキングでは、SDGsの17目標ごとに4段階で評価しており、日本は6つの目標が最低評価の「大きな課題が残っている」とされました。
なかでも、『目標5:ジェンダー平等を実現しよう』や『目標13:気候変動に具体的な対策を』など、5つの目標は前年に続いて「大きな課題が残っている」との評価を受けています。加えて、リサイクル活動やエコ商品の生産・使用などといった取り組みを含む『目標12 :つくる責任つかう責任』は今年から評価が引き下げられ最低評価となりました。特に「電気電子機器廃棄物量」および「廃プラスチック輸出量」の多さが大きく問題視されています。
こうしたSDGsに関する評価を知ることにより、国や自治体は持続可能な社会を構築するうえで支援が必要となる分野を把握でき、効果的な政策づくりにつながることが期待できます。
さらに、進捗度が低く課題が残っている項目というのは、それに関連するビジネスの展開が比較的進んでいないことを示しています。言い換えれば、そこにビジネスチャンスがあるということです。企業がそのチャンスを掴めば他社との差別化ができるうえに、現在と将来に向けて必要とされているビジネスを手がけることができ、企業自身の成長につながると考えられます。
日本で「大きな課題が残っている」とされている6つのSDGs目標における具体的な事業内容は以下のものがあげられます。
- 『目標5:ジェンダー平等を実現しよう』
保育ビジネス、介護ビジネス、テレワーク・働き方改革に役立つツール・クラウドの開発や提供など - 『目標12 :つくる責任つかう責任』
リサイクル事業、エコ商品の製造や販売、廃棄物管理システムの開発や提供など - 『目標13:気候変動に具体的な対策を』
再生可能エネルギービジネス、木材製品製造や販売など - 『目標14:海の豊かさを守ろう』
持続可能な漁業やそれで獲られた水産物の販売、海の浮遊ごみ回収装置の開発、プラスチック代替素材を使った商品の製造や販売など - 『目標15:陸の豊かさも守ろう』
植樹事業、環境活動助成事業、灌漑設備関連事業など - 『目標17:パートナーシップで目標を達成しよう』
プラットフォームビジネスなど
ただし、こうした新たなビジネスチャンスを探ることは企業にとって大きなメリットがありますが、SDGsを"身近なことから"ちょっとずつ取り組んでいくことも大切です。
例えば、簡単に取り入れられる紙の印刷を減らすことやゴミの分別により、『つくる責任つかう責任』や『海の豊かさを守ろう』といったSDGsの目標に貢献することができます。
他にも、性別にとらわれない成果による評価制度や男性の育児・介護休業の推進はジェンダー平等に関する目標に関与でき、LED照明に切り換えることで気候変動に関する目標に貢献することもあげられます。こうした取り組みにより、企業のイメージの向上や人材確保・定着率の向上、取引の拡大などといった効果が期待でき、それが企業自身の存続と発展につながります。
SDGsの目標達成期限である2030年まであと8年を切りました。企業はSDGsを通じて自社の持続可能な成長を実現するとともに、その動きをサポートする国や自治体のあらゆる対策や支援が求められます。
[1] The Sustainable Development Solutions Network (SDSN), Sustainable Development Report 2022