女性の活躍による人手不足解消の可能性は?
新型コロナ禍3年目、再び企業の人手不足の割合が高まってきています。これまで以上に企業にとって欠かせない資産である「ヒト」に関して、質・量ともに重視されるでしょう。
さらに、多様性が進む現代社会では、職場における女性の活躍推進は企業価値の向上のほか、企業の持続的成長においても重要度が高まっています。
そこで、女性の活躍と人手不足、今後の企業の発展に欠かせない2つの視点について帝国データバンクが2022年7月に調査を実施した調査結果[1][2]を元に分析を行いました。
上図は、横軸に女性管理職割合の平均(全国で9.4%)、縦軸に正社員の人手不足割合(全国で47.7%)を示しています。
左上に位置する第2象限は、全国の数値より、女性管理職の割合が低く、正社員の人手不足が深刻となっています。特に「建設」は女性管理職割合の平均が6.4%で人手不足の割合が62.7%となっていました。また警備業などを含む「メンテナンス・警備・検査」(女性管理職5.9%、人手不足59.8%)やトラック運送などを含む「運輸・倉庫」(同6.9%、同59.4%)も女性管理職の割合が低く、人手不足が課題と言えそうです。
企業からは「建設業だが、女性でも扱える機器を導入しデジタル化を進め女性採用を強化している」(電気配線工事)といった声もあげられています。しかしながら、とりわけ重労働、昼夜を問わない勤務体系など女性が活躍し難い業種では、急速な働き方の変化が起きなければ今後も労働力獲得は企業活動を行う上での大きな課題になると考えられます。
一方で、アパレルなどを含む「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同41.5%、同33.3%)では、女性管理職の割合が突出して高く、人手不足の割合も低くなっています。女性が活躍しやすい業種では人手不足解消の可能性も示唆されますが、そもそも現在の経済状況で人手を欲していない可能性もあるため、一概には言えません。
さらに、「旅館・ホテル」(同21.1%、同66.7%)では、女性管理職の割合が高いにも関わらず、人手不足の割合も高まっています。
今後、政府は「ヒト」への投資など進める施策を次々と行っていきます。政府などが推進する能力開発や労働移動に向けた取り組みは、より一層女性の活躍を促進することに繋がります。やはり大きく生産年齢人口が減少するなか、女性の活躍は企業の人手不足の解消に一翼を担っていくことでしょう。
[1]帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年7月)」(2022年8月29日)
[2]帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2022年)」(2022年8月30日)