観光産業の景気動向
観光産業の景況感、2年11カ月ぶりの水準まで上昇
~ 観光DIは40.1、全国旅行支援・水際対策緩和の効果が鮮明に ~
~ 観光DIは40.1、全国旅行支援・水際対策緩和の効果が鮮明に ~
2022年10月11日、新たな観光支援策「全国旅行支援」が46道府県でスタートした(東京都は10月20日から)。また、同日より入国者数の上限撤廃や外国人観光客の個人旅行を解禁、さらに米国など多くの国でビザが不要になり、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)にともなう水際対策も大きく緩和された。新型コロナショックによって停滞していた人の移動を促す取り組みが、国内・国外向けともに動き出した。新型コロナ下において多大なダメージを受けてきた観光産業における期待は非常に高いものがある。
- 2022年10月の観光DIは41.0、2019年11月以来2年11カ月ぶりの水準まで上昇
- 「宿泊サービス」の景気DIが53.3でトップ、「旅行代理店」などが大幅に改善
- まとめ 観光産業の企業からは、「全国旅行支援や海外の方に対する水際対策緩和の効果が大きい」(旅館)や「全国旅行支援等の施策によりレンタカー需要が増加」(自動車賃貸)など、観光支援策によるプラス効果を感じている企業は多い。ただし、11月に入り新規感染者が再び増加しており、冬の観光需要への影響が懸念される。ようやく上向き始めた観光産業へのさらなる政策的な後押しが必要となろう。
観光産業[1]の景況感を表す観光DI[2]は、2022年10月に41.0となり9月から5.5ポイント増加、2カ月連続で改善した(図1)。新型コロナの感染が拡大する前である2019年11月(41.0)以来2年11カ月ぶりの水準まで上昇してきた。観光支援策「全国旅行支援」のスタートや水際対策の緩和などにより人流が大幅に増加し、観光産業の景況感を大きく押し上げる要因となった。
他方、全産業ベースの景気DI(42.6)と比較すると、観光DIは1.6ポイント低く、依然として全体を下回る状況が続いている。ただし、2021年9月に16.9ポイントあった全産業の景気DIと観光DIの格差は、1年あまりで15.3ポイント縮小した。
観光DIの内訳をみると、「宿泊サービス」(53.3、前月比15.9ポイント増)の景況感が最も高かった(表1)。次いで、劇団、ゴルフ場、テーマパークなどを含む「文化サービス/スポーツ・娯楽サービス」(48.9、同0.7ポイント減)、観光バスやレンタカーなどを含む「旅客輸送サービス/輸送設備レンタルサービス」(45.6、同6.4ポイント増)などが続いた。特に改善幅が最も大きい「旅行代理店その他の予約サービス」(40.0、同17.7ポイント増)では、企業から「新型コロナ第7波が収束してきた時に全国旅行支援もあり好調」(旅行代理店)などの声も聞かれた。
[1] 観光産業は非常にすそ野が広く、特定の業種分類として表すことは困難であり、個々の産業に関する統計整備にとどまる。そこで、本レポートでは、UNWTO(世界観光機関、World Tourism Organization)が示している国際基準であるTSA(旅行・観光サテライト勘定、Tourism Satellite Account)において観光産業(Tourism Industries)に分類されている業種に基づき、観光産業として定義した。
[2] 観光DIは、注1で分類した観光産業に属する企業の景気判断を総合した指標。観光DIは0~100の値をとり、50より上であれば景気が「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。