【2022年デジタル競争力】日本は過去最低の29位 ~上位国との違いは?~
デジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれて久しい。
スイスの有力ビジネススクールIMDが発表している『世界デジタル競争力ランキング』の最新版である2022年版[1]で日本は前年から1つ順位を下げ、 63カ国中29位となり、過去最低を更新しました。G7のなかでは下から2番目(前年と同順位)、アジア・太平洋地域では14カ国中で8位(前年から1ランク上昇)となりました。
同ランキングは、DXに対する準備などを含め経済的および社会的変革に向け、各国政府や企業はどの程度デジタル技術を利活用できているかを示したもので、統計データおよび企業の経営層へのアンケート調査から52の指標を測定して評価を行っています。
日本においては、「高等教育の生徒当たり教師数」(1位)や「モバイルブロードバンド利用者数」(2位)、「世界におけるロボットの流通」(2位)、「ソフトウエア著作保護」(2位)の項目で引き続き高い評価を得ました。
一方で、調査開始の2017年から低水準が続いているのは「国際経験」、「ビッグデータ活用・分析」、「企業の機敏性」、「機会と脅威の対応」でいずれも63位と調査対象国のなかで最下位となりました。また、企業における「デジタル技術スキル」も62位にとどまっています。実際、帝国データバンクが実施した企業への意識調査[2]によると、DXに取り組むうえでの課題について、「対応できる人材がいない」(47.4%)および「必要なスキルやノウハウがない」(43.6%)が上位となり、人材やスキル・ノウハウの不足は最大の課題となっています。
総じて、日本は良い技術基盤を持っているにも関わらず、企業においてはそれを活かす人材やデジタルスキルが不足していることや、デジタル化の動きなどビジネス環境変化への"企業の対応力"に引き続き問題があると言えます。
さて、日本企業におけるデジタル化やDXへの取り組みは、上記ランキングにおいて2018年から4年連続で1位を獲得していたアメリカ(2022年:2位)と比べてどのような違いがあるのでしょうか?
情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX白書2021」によると、日本ではDXに取り組んでいる企業が55.8%であるのに対してアメリカでは79.2%と大きな差が生じています。
また、社員のITリテラシーの向上に関する施策状況について、日本企業では「社内研修・教育プランを実施している」が22.0%、「社外研修の受講を実施、推奨している」が22.1%となり、合計すると44.1%が施策を実施しています。
一方でアメリカではそれぞれの割合が54.5%と32.8%で、合わせて施策を実施している企業は87.3%と日本の2倍近くとなりました。さらに、日本において社員のITリテラシーレベルを認識・把握している企業は39.8%だった一方、アメリカ企業では80.8%と日本を大幅に上回っています。日本ではデジタルスキルの向上に関する施策の実施にあたって必要なプロセスである「現状把握」を含め、デジタル化・DXへの対応がアメリカに大きく遅れを取っていることが明らかになりました。
デジタル技術の進展や消費者ニーズの多様化によってビジネス環境が激しく変化するなか、企業が生き残るためにはデジタル化やDXへの取り組みが求められています。
日本企業はデジタル人材の確保のほか、在籍している従業員のITリテラシーなどデジタルスキルを把握したうえでリスキリングなど社内全体のスキルの向上に関する施策を実施することが肝要となるでしょう。
[1] IMD, World Digital Competitiveness Ranking 2022