観光産業の景気動向(2)観光DIが過去最高を更新
観光DIは48.4、新型コロナ禍を脱する
~ 一方で人手不足による機会損失もみられ、上昇スピードの低下が懸念 ~
~ 一方で人手不足による機会損失もみられ、上昇スピードの低下が懸念 ~
2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症に関する感染症法上の位置づけが、これまでの「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」へ移行した。また、これに先立つ3月13日にはマスクの着用が個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となった。こうしたなか、日本経済は、人出の増加とともにアフターコロナに向けた動きが急ピッチで進んでいる。新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)により非常に大きなダメージを受けた観光産業においても、明るい材料が表れてきた。
- 2023年4月の観光DIは48.4と過去最高、全産業の景況感を2カ月連続で上回る
- 「宿泊サービス」の景気DIが62.1で過去最高を記録、文化・スポーツ・娯楽サービスも60に迫る
- まとめ 観光産業の企業からは、「インバウンドが春の観光シーズンと相まって、バスの予約が大量に入っている」(一般貸切旅客自動車運送)や「観光需要の回復にともなう宿泊需要の増加が顕著に見られる」(旅館)といった、新型コロナの収束や全国旅行支援などを受けた人出の増加が大きなプラス効果をもたらしている。他方、「宿泊サービス」や「飲食サービス」などでは厳しい人手不足に直面、機会損失も発生している。今後、観光産業の景気は緩やかに拡大していくと見込まれる。
観光産業[1]の景況感を表す観光DI[2]は、2023年4月に48.4と前月から1.9ポイント増加し、2002年5月の調査開始以降で最高を更新した(図1)。観光産業は新型コロナにより非常に大きな打撃を受けたが、観光支援策「全国旅行支援」の実施やインバウンド消費の回復に加えて、アフターコロナに向けた企業の対応など、新型コロナ禍から脱する動きが見えてきた。
全産業ベースの景気DI(44.6)と比較すると、観光DIは3.8ポイント高く、2カ月連続で上回った。
観光DIの内訳をみると、「宿泊サービス」(62.1、前月比2.6ポイント増)の景況感は60を超え、過去最高を記録した(表1)。さらに、ゴルフ場や劇団、テーマパークなどを含む「文化サービス/スポーツ・娯楽サービス」(59.8、同3.1ポイント増)も過去最高となった。以下、外食などの「飲食サービス」(50.0、同1.4ポイント増)は2015年8月(50.3)以来、7年8カ月ぶりに50台に達したほか、「旅行代理店その他の予約サービス」(48.4、同1.8ポイント増)が続いた。他方、唯一悪化した「旅客輸送サービス/輸送設備レンタルサービス」(47.9、同2.1ポイント減)の企業からは「従業員(乗務員)不足が響いた」(一般乗用旅客自動車運送)などの声も聞かれた。
[1] 観光産業は非常にすそ野が広く、特定の業種分類として表すことは困難であり、個々の産業に関する統計整備にとどまる。そこで、本レポートでは、UNWTO(世界観光機関、World Tourism Organization)が示している国際基準であるTSA(旅行・観光サテライト勘定、Tourism Satellite Account)において観光産業(Tourism Industries)に分類されている業種に基づき、観光産業として定義した。
[2] 観光DIは、注1で分類した観光産業に属する企業の景気判断を総合した指標。観光DIは0~100の値をとり、50より上であれば景気が「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。