景気回復のカギを握る個人消費、さらなる賃上げの継続が必要
日本のGDPの5割超を占める個人消費が伸び悩んでいます。
内閣府が発表した四半期別GDP速報(2次速報)によると、実質個人消費は2023年4~6月期、7~9月期と2四半期連続で前の期と比べてマイナスとなりました。2四半期連続で悪化するのは、2018年10~12月期から2019年1~3月期以来のことです。
個人消費の伸び悩みは、企業の景況感にも表れています。帝国データバンクが「TDB景気動向調査」で算出している個人消費DIは、マスクの着用が各個人で判断されるようになった2023年3月に急上昇して以降、ジリジリと鈍化している様子がうかがえます。ただし、個人向けサービス業は、インバウンド需要が活発なこともあり、旅館・ホテルや飲食店をはじめ9カ月連続で判断の分かれ目となる50を上回る水準で推移しています。
個人消費が伸びない背景として、実質賃金が19カ月連続で減少していることが最大の要因になっていると言えるでしょう。厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」(速報、従業員5人以上の事業所。2023年12月8日公表)によると、10月の物価を考慮した一人当たりの実質賃金は前年同月比で2.3%減少しました。食品や電気料金など生活必需品の値上げを含め物価高が続くなかで、賃金上昇がそれに追いついていない状況です。10月からは過去最大の上げ幅となった最低賃金が適用されていますが、インフレ率とのギャップは依然として大きなままです。
明るい話題としては、名目賃金が22カ月連続で増加していることでしょう。一人当たりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の27万9,172円となっています。そのうち、基本給にあたる所定内給与は同1.4%増となっており、賃上げの効果がある程度表れている結果と言えるのではないでしょうか。
また、冬のボーナスも昨年より一人当たりの支給額が増加した企業は24.1%と4社に1社となっています(帝国データバンク「2023年冬季賞与の動向調査」2023年12月6日発表)。観光産業を中心に、少しずつボーナスを支給する企業は増えていますが、小規模企業が多く集積するアパレル小売や、人手不足が深刻な飲食店などでは、引き続きボーナスを支給しない企業の割合が高水準で推移しているのも現状です。
今後の国内景気が回復に向かうかどうかは、個人消費の動向が大きなカギを握っています。賃金の上昇を労働者が実感し、経済が好循環のプロセスに乗るためには、さらなる継続的な賃上げが必要となるでしょう。