日本銀行、マイナス金利政策の終了と金融政策の新展開
2024年3月19日、日本銀行は金融政策決定会合においてマイナス金利政策の解除を決定しました。マイナス金利政策は2016年2月に導入され、日銀の金融緩和政策の象徴となっていました。
日銀のマイナス金利政策は、3つの階層構造方式をとっていました。これは、金融機関が日銀に預けている当座預金口座の準備預金を基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高の3つに分け、政策金利残高に対してマイナス金利を適用するものです。
以前の当コラムで述べたように(2024年1月18日「2024年は「金利のある世界」への転換点、意識を切り替えるとき」)、マイナス金利政策の解除は「金利のある世界」への第一歩となるでしょう。これは金融政策の正常化です。
日銀は、同時にYCC(イールド・カーブ・コントロール、長短金利操作)も撤廃しました。これまでの金融緩和政策からの出口で最も難しいとされていた措置です。しかし、日銀は2023年の7月と10月の2回にわたって長期金利の変動幅を拡大しました。その結果、現在、市場で取引される長期金利(10年物国債の利回り)は日銀の設定する変動幅の上限を下回る水準で安定しており、YCCの撤廃による市場への影響を防ぐことができています。これは日銀が異次元の金融緩和政策から脱することに成功したと言っても良いでしょう。
また、ETF(上場投資信託)の購入やREIT(不動産投資信託)の新規買入れも終了しました。長期国債の買入れはこれまでとおおむね同程度の金額で継続することとなりました。つまり、2013年4月から続いていた量的・質的金融緩和政策が終了したのです。
ただし、今後の動向は慎重に検証する必要があります。日銀は4月に発表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」まで、実態経済の状況を詳細に確認していくでしょう。また、当面は頻繁な利上げは行わず、ゼロ金利政策を維持すると予想されます。今後も金融政策への注目度は高まり続けるでしょう。