CBDC(中央銀行デジタル通貨)時代の金融IT市場と課題

2024年7月3日、日本銀行は新しいデザインの紙幣の発行を開始します。1万円札は「日本近代社会の創造者」と言われる渋沢栄一、5千円札は生涯を通じて女性の地位向上と女子教育に尽力した教育家の津田梅子、千円札は破傷風を予防・治療する方法を開発した微生物学者で「近代日本医学の父」と呼ばれている北里柴三郎の各氏が、肖像に選ばれています[1]。


こうしたなか、4月17日、財務省や日本銀行などによる「CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」について、デジタル通貨の中間整理が公表されました[2]。そこでは、経済・社会のデジタル化が急速に進展、キャッシュレス決済サービスの利用が広がっていることが指摘されています。そして、これを前提としつつ、日本においてCBDCを導入することを予断することなく、仮に導入する場合に考えられる制度設計上の主要論点への考え方などが述べられています。


CBDCとは、中央銀行が法定通貨建てで発行する、デジタル化された中央銀行マネー(銀行券と中央銀行当座預金)と定義されます。そこでは、(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されることが必要であり、そのための技術開発が不可欠となっています。こうした状況のなか、海外のCBDCに関わる企業が大手だけでなく中小規模のFinTech企業にも広がりをみせています。


経済のデジタル化およびDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進むなかで、新たな技術を集約した決済システムの広がりは、経済の回復に向けて大きな可能性を持つ分野ともいえるでしょう。東京都にあるソフト受託開発業を営む中小企業からは「金融IT分野は重要な輸出市場となる」といった意見が聞かれる一方、その前段階として「IT技術者の不足が大きな問題」(ソフト受託開発業、神奈川県)はCBDCの発展にとって解決すべき課題になっています。


いま、お金のデジタル化は、さまざまな分野で議論されている非常にホットな話題と言えるでしょう。


[1] 詳しくは、日本銀行の改札・改鋳ページや、独立行政法人国立印刷局の新しい日本銀行券特設サイト(https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/)などを参照。

[2] 財務省、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する関係府省庁・日本銀行連絡会議 中間整理」(2024年4月17日公表)










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