新紙幣発行の「意外な効果」とは?

2024年7月3日、日本銀行は新しいデザインの紙幣の発行を開始しました。


各地の金融機関には両替などを目的に顧客が来店したり、イベントが行われたりと盛り上がりを見せ、さまざまな経済効果が生まれています。


なかでも、この新紙幣に対応した券売機や両替機などのシステム改修・入れ替えなどの特需により、関連企業ではプラスの影響が大きいとみられます。


一方で、そういった機種を利用している企業は対応が迫られており、特に中小・零細企業からは、各種コストが高騰しているなかでの今回の対応による費用負担のさらなる増加に悲鳴が上がっています。負担額はさまざまですが、例えばバスの運賃箱の場合は、入れ替えには1台100万円から200万円ほどかかると日本バス協会が公表しています。


この多額の費用がネックであることや機種の部品不足で、入れ替えが間に合わない企業も多いようです。実際、帝国データバンクが6月に実施したTDB景気動向調査では、「新紙幣発行にともなう製品の更新や改造による特需は、金融機関や大手流通などが概ね一服したものの、中小企業からの発注は現在も好調」(事務用機械器具卸売)といった声が聞かれました。


上記以外にも「キャッシュレス化への後押し」という効果が期待されていますが、これは、今回の対応を契機にキャッシュレス決済ができる機種を導入する動きが拡大していることが背景にあります。導入の理由は消費者のキャッシュレス化ニーズへの対応のほか、新紙幣対応機種の入れ替えなどが間に合わない、キャッシュレス対応機種の方が費用負担が少ない、売上金を数える作業などにかける人件費を抑えたいなどさまざまです。


また、新紙幣に描かれている肖像の人物ゆかりの地の活性化がみられるほか、自宅で保管している現金、いわゆる「タンス預金」の取り崩しによる消費の拡大も期待されています。実際、前回紙幣が発行された20年前もその発表から発行までの間にタンス預金が一時的に減ったといいます。さらに、個人や企業の気分が一新し、消費マインドの改善につながる可能性も考えられます。


今回の紙幣刷新の目的は「偽造防止の強化」および「ユニバーサルデザイン」の導入ではありますが、それ以外に日本の経済社会にどの程度プラスの効果をもたらすのか、今後に注目です。

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