2007年11月の景気動向調査
景気DIは39.5、8カ月連続の悪化で3年11カ月ぶり40ポイント割れ
2007年11月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は39.5と前月比1.1ポイント減少した。8カ月連続の悪化となるとともに、前月(1.3ポイント減)に続く1ポイント以上の悪化幅となり、2003年12月(39.2)以来47カ月(3年11カ月)ぶりに40ポイント割れとなった。
前月(10月)までの概況
・2007年7月以降、米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の表面化によって、米住宅景気への懸念や世界的な信用収縮への警戒感が増幅。原油価格の上昇や円高の進行に加え、「改正建築基準法」の施行による建築確認の遅れ・手控えの影響が幅広い業界へと波及し、景気DIの悪化に歯止めかからず
11月の概況
原油高リスク、円高リスクが一層深化、それに伴う株価急落も全体景況感にマイナス
・需給ひっ迫懸念からNY原油先物相場(WTI、期近)が一時1バレル=99ドル台と100ドルの大台に迫ったことで、鉄鋼や運輸業界をはじめ幅広い業界で景況感が引き続き悪化
・米サブプライムローン問題に絡んだ米景気の下振れ懸念などから、為替相場は一時1ドル=107円台前半まで上昇。これにより、外需関連業界を中心に業績悪化懸念が台頭し、国内株式市場の急落も全体の景況感を押し下げ
素材・消費財の相次ぐ値上げで川下の中小卸売、小売業者の業況悪化続く
・ガソリン価格をはじめ鋼材や石化製品、飲食料品などでも価格の値上げが相次いでいるにもかかわらず、川下の中小卸売、小売業者は依然として消費に回復がみられないなか仕入れコスト上昇分を売価に転嫁できず、業況がさらに悪化
→ 『小売』は10業界中最大の悪化幅、大企業と中小企業の景況感格差は5.0ポイントと集計開始以来初めて5ポイント台へ拡大
「改正建築基準法」の施行による建設・不動産、周辺業界への悪影響が一層深化
・2007年6月の「改正建築基準法」施行による建築確認の長期化や手控えが収まらず、建設、不動産や建材、鉄鋼など周辺業界への悪影響が一層深化
景況感の押し下げ要因となっている原油高・円高や「改正建築基準法」の施行による確認申請の遅れ・手控えなどのリスクが、ここ2カ月間でさらに深化。また、依然消費に回復がみられないなか、川下の中小卸売、小売業者を中心に仕入れコスト上昇分を売価に転嫁できず厳しい経営を強いられており、景気DIはついに2003年以来の40ポイント割れ水準まで下落、足元経済の厳しい状況が浮き彫りとなっている。
今後の見通し
先行き見通しDIは、3カ月連続して「3カ月後」(42.2)、「6カ月後」(42.3)、「1年後」(43.3)ともに悪化。国内経済の先行きに対しても厳しい見方に変化はみられない。
原油価格はここへきてやや下落し、為替相場も米国の利下げ期待などから落ち着きを取り戻しつつある。また、先行き見通しDIが2カ月連続して「3カ月後」「6カ月後」「1年後」と先に行くにつれて高くなるなど、これまでの景気DIの悪化に歯止めがかかる兆候も表れ始めている。
しかし、原油高リスクや円高リスクが払拭されたとは到底言えず、国内において素材・消費財価格の値上げはしばらく続くことが予想される。また、「改正建築基準法」「金融商品取引法」をはじめとした法規制強化の流れは、今後さらに関連業界の経営環境を悪化させる公算が大きい。実際、2008年の景気見通しについて尋ねた結果、4割超の企業が悪化局面と予想していることが明らかとなっている(別紙【特別企画】参照)。
米経済も住宅市況の悪化でしばらく停滞が続くとみられている状況下では、景気DIが改善傾向に転じるのは容易ではなく、当面は原油価格動向や為替相場、米サブプライムローン問題の行方に左右される厳しい展開が続くとみられる。