2009年11月の景気動向調査
景気DIは24.7で9カ月ぶりに悪化、国内景気にデフレスパイラルの兆し
< 2009年11月の動向 : 踊り場局面 >
2009年11月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.2ポイント減の24.7となり、9カ月ぶりに悪化した。
業界別にみると、中国などの外需の復調や政策的な消費喚起によって『製造』(25.3)が9カ月連続で改善。『小売』(26.5)も2カ月ぶりに改善したが、いずれも小幅な改善にとどまった。原材料価格に再び上昇傾向がみられる一方、需要不足を背景とした価格下押し圧力の増大によって、消費者物価の下落が続いており、政府も「緩やかなデフレ」を認定するなど、企業の収益環境は厳しさを増している。
こうしたなか、『卸売』(24.1)は企業からの値引き要請や流通網見直しなどコスト削減の動きが進んだことで業況が低迷し、9カ月ぶりに悪化した。また、公共投資や民間設備投資の抑制、個人消費の伸び悩みにより『サービス』(26.1)や『建設』(22.0)『不動産』(25.4)なども悪化した。
需要不足による企業収益の悪化とそれに伴うコスト削減、雇用環境や所得の悪化などが長期化しており、企業部門と家計部門に負の連鎖が表れ始めている。ただ、外需の復調と政策による下支えで、景気DIは大幅な悪化までは至っていない。
国内景気はデフレスパイラルに向かう兆しもみられるが、踊り場局面に踏みとどまっている。
① 原材料価格の上昇と需要不足による価格下押し圧力の増大で、収益環境は厳しさ増す
・各国の金融緩和政策による過剰流動性の拡大や中国需要の増加観測などで、原材料価格が再び上昇傾向となった一方、国内は需要不足や円高進行により消費者物価の下落が続き、流通網見直しなどコスト削減の動きも広がって、収益環境は厳しさを増した。
② 雇用悪化や所得減の長期化で家計の生活防衛行動が広がり、個人消費が伸び悩む
・収益構造の転換を目的とした企業のコスト削減によって、雇用悪化や所得減が長期化し、家計では生活防衛を意識した動きが広がって、個人消費は伸び悩んだ。「飲食店」(21.6)が大幅に悪化するなど、新型インフルエンザの流行拡大も悪影響となった。
③ 外需の復調や政策的な消費喚起が景気を下支え
・中国を中心としたアジア圏などの外需の復調と、エコポイント制度、エコカー減税などの消費喚起策が景気を下支えした。
< 今後の見通し : 踊り場局面から下振れの可能性も >
一部の大手製造業や小売店などでは、外需の取り込みや収益力の向上によって、業況回復や拡大が見込まれ、年末年始商戦や冬季オリンピック需要などで、在庫圧縮や生産活動の底上げも期待される。
しかし、所得悪化や厳しい雇用情勢の長期化により、需要不足や消費者物価の下落基調は継続することが見込まれ、企業部門が本格回復する状況にはない。年金などの将来不安も払拭されておらず、家計部門では生活防衛意識が一段と高まる恐れがあり、国内景気は悪循環に陥る可能性もある。ドバイ・ショックによる金融危機の再燃やいまだ不安定な米経済、為替動向なども懸念される。
景気予測DIは「1カ月後」(24.8、当月比0.1ポイント増)、「3カ月後」(24.6、同0.1ポイント減)、「6カ月後」(26.6、同1.9ポイント増)と、最悪期からは脱しているものの、依然として回復力は弱い。
今後の国内景気は、内需がさらに弱含むことで、踊り場局面から下振れする可能性もある。