2010年11月の景気動向調査
景気DIは32.3で4カ月ぶりに改善、国内景気は踊り場局面に踏みとどまる
< 2010年11月の動向 : 踊り場局面 >
2010年11月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.8ポイント増の32.3となり、4カ月ぶりに改善した。
業界別では9業界が改善した。特に、『製造』(34.4)は中国などの外需が堅調で、円高傾向も一服し、政策支援による下支えも緩やかながら続いたことで、4カ月ぶりに改善した。『小売』(30.7)も食料品や衣料品などの季節商材が比較的好調であったことから4カ月ぶりに改善した。しかし、いずれの改善幅も夏以降の悪化を幾分戻した程度であり、エコカー補助金終了後の自動車関連業界では停滞が続くなど、自律回復の動きは弱い。
国内景気は踊り場局面に踏みとどまっているが、外需や為替動向などに支えられて急落を回避したに過ぎず、依然として回復力は弱い。
① 堅調な外需や円高の一服により、『製造』は4カ月ぶりに改善
・中国やインドなどのアジアを中心に外需は堅調で、米国による大規模な追加の金融緩和策や緊迫する朝鮮半島情勢など地政学リスクの顕在化も影響して、円高傾向が一服(1ドル=84円台)し、輸出企業の収益性はこれまでの厳しさがひとまず和らいだ。
・一方、エコカー補助金の終了による影響で「輸送用機械・器具製造」(34.6)は4カ月連続で悪化。「電気機械製造」(38.2)は同1.1ポイント増と4カ月ぶりに改善したが、家電エコポイントの効果も大きな底上げにはつながらなかった。
② 家電エコポイントの駆け込み需要や季節商材が好調で、『小売』は4カ月ぶりに改善
・家電エコポイントの駆け込み需要によって「家電・情報機器小売」(36.4)は同3.1ポイント増となり、今回の景気回復局面での最高を更新。季節商材も比較的好調で、「飲食料品小売」(32.5)や「繊維・繊維製品・服飾品小売」(30.9)などが改善した。
・一方、「自動車・同部品小売」(22.4、前月比横ばい)は低水準が継続し、全51業種中で2カ月連続の最低となった。また、家計の消費マインドの停滞やタバコの値上げによる来店客数の減少などで「各種商品小売」(30.5)も同1.0ポイント減と悪化した。
< 今後の見通し : 踊り場局面 >
EUでは金融不安が根強いものの米国景気は底堅さをみせており、企業は経営効率化とともにアジアを中心とした外需獲得を強化している。日経平均株価は5カ月ぶりに1万円台を回復し、2010年度補正予算が成立するなど景気下支えへの期待もかかる。
しかし、雇用や所得は厳しさが続く見込みで、2010年12月から新年度にかけては政策支援の縮小や終了が相次ぐ(家電エコポイント約半減:2010年12月、住宅取得資金の贈与税非課税枠の縮小:2011年1月、家電エコポイント制度終了、緊急保証制度終了:同年3月)。こうしたなか、原油価格や鉄鉱石など原材料価格には上振れの兆しがあり、需要が弱いなかで企業は一段の収益力低下に陥る恐れがある。不安定な政治も国内景気の先行き不透明感を増幅させている。
景気予測DIは「1カ月後」(32.1、当月比0.2ポイント減)、「3カ月後」(32.0、同0.3ポイント減)、「6カ月後」(33.5、同1.2ポイント増)となった。
国内景気は踊り場局面が続くとみられるが、内需低迷により一段と下押しされる可能性もある。