2014年11月の景気動向調査
急激な円安、国内景気を圧迫
■調査結果のポイント
- 11月の景気DIは前月比0.6ポイント減の43.5となり、4カ月連続の悪化となった。追加金融緩和政策により一段と円安が進行したことで、仕入価格の上昇が再び加速、収益環境の厳しさが増している。コスト増は人手不足を非正社員の増加で補い、賃金上昇を押さえる要因ともなった。国内景気は、円安を通じた原材料高や賃金上昇の抑制による影響が広がっており、悪化している。今後の国内景気は、先行きへの期待感を含みながらも、ほぼ横ばいでの推移が続くと見込まれる。
- 業界別では10業界中8業界が悪化した。原材料価格の上昇や人手不足は『建設』の悪化要因となっているほか、消費者の購買意欲の低下により建物売買業において景況感が大きく悪化している。
- 地域別では、『北海道』や『北陸』など10地域中7地域が悪化した。特に、『北海道』では、電気料金が11月から値上げされたことによるコスト負担増が景況を悪化させる要因となった。なかでも、『不動産』の悪化は大きく、21カ月ぶりに50を下回った。
< 2014年11月の動向 : 国内景気は悪化 >
2014年11月の景気DIは前月比0.6ポイント減の43.5となり4カ月連続で悪化した。
11月は、7~9月期のGDPが2期連続マイナス成長となり消費税率再引き上げが延期された。また、前月末に追加金融緩和政策が実施され一段の円安となったことで、為替レートは2年で44%下落した。そのため、仕入価格の上昇が再び加速し、企業の収益環境の厳しさが増している。また、為替レートの2年間での下落率を平均してみると、2014年は日本が1973年に変動相場制に移行してから最も速いスピードで円安が進んだ。円安によるコスト増を価格転嫁できず売り上げが伸び悩むことに加え、人手不足に対し賃金上昇を抑えるために非正規雇用を増やすことで対応し、消費低迷の要因ともなっている。
国内景気は、円安を通じた原材料高や賃金上昇の抑制による影響が広がっており、悪化している。
< 今後の見通し :下振れ懸念のあるなか、ほぼ横ばいで推移 >
消費税率の再引き上げが延期されたことで、当分、駆け込み需要は発生しないとみられる。10月末からの追加金融緩和政策により一層の円安が進むと予想されるため、輸入コスト上昇を販売価格に転嫁できない企業の収益悪化は懸念材料である。さらに、人手不足は建設関連での入札見送りなどをもたらし、成長を阻害する要因として景気の下振れ要因となろう。また、総選挙の結果次第では経済政策が停滞する可能性がある。今後は、原油価格の下落による企業や家計へのコスト負担の軽減効果など先行きへの期待感を含みながらも、
国内景気は下振れ圧力もあり、ほぼ横ばいでの推移が続くと見込まれる。
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