2021年5月の景気動向調査
緊急事態宣言などで4カ月ぶりに悪化
■調査結果のポイント
- 2021年5月の景気DIは前月比0.8ポイント減の37.5となり、4カ月ぶりに悪化した。国内景気は、感染拡大防止対策で人流抑制が図られたことで、4カ月ぶりの悪化となった。今後は、下振れリスクも多く一時的に悪化するものの、徐々に上向いていくとみられる。
- 10業界中、『建設』『製造』など8業界が悪化。多くの業種で、木材や鉄鋼など材料の不足、その価格高騰による影響がみられた。また、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の延長、対象地域の拡大もあり、「旅館・ホテル」「飲食店」といった個人消費関連の業種は低水準での推移が続いた。
- 『北海道』『中国』『九州』など4カ月ぶりに10地域すべてが悪化した。地域間で景況感の二極化が進み、地域間格差は5.0ポイントへと再び拡大。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の地域拡大などの影響が幅広く表れた。規模別では「大企業」「中小企業」「小規模企業」が4カ月ぶりにそろって悪化した。
< 2021年5月の動向 : 上向き傾向が一服 >
2021年5月の景気DIは前月比0.8ポイント減の37.5となり、4カ月ぶりに悪化した。
5月の国内景気は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間延長や対象地域の追加・拡大などによる人流抑制を通じて、経済活動に大きく制限がかけられたなかでの推移となった。休業や営業時間の短縮などが個人消費の下押し要因となり、関連する川上産業を含む幅広い業種に悪影響を及ぼした。さらに、燃料価格の上昇がコスト負担を高めたほか、半導体不足にともなう一部企業の工場の稼働停止などもマイナス要因となった。他方、米国や中国など海外経済の回復で輸出が大きく増加したことに加え、自宅内消費の拡大がプラス材料となるなど、企業の景況感は「K字型回復」の傾向が一段と強まった。
国内景気は、感染拡大防止対策で人流抑制が図られたことで、4カ月ぶりに悪化した。
< 今後の見通し : 一時的に悪化も徐々に上向く >
今後の国内景気は、一部地域で6月20日まで延長された緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の継続・解除のタイミングなどが、経済活動に大きく影響するとみられる。特に、夏季賞与の減少や原材料価格の上昇などは下振れ要因となろう。また、半導体不足やコンテナ不足による生産の停滞などの供給リスクは悪材料となり得る。他方、ワクチン接種の拡大による経済活動の正常化や海外経済の回復、自宅内消費の増加、5Gの本格的普及などはプラス材料となろう。ただし、各社の業績に対する「K字型回復」の動向や東京五輪の行方などは注視する必要がある。
今後は、下振れリスクも多く一時的に悪化するものの、徐々に上向いていくとみられる。
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