2022年9月の景気動向調査
国内景気は小幅ながら2カ月連続で改善
■調査結果のポイント
- 2022年9月の景気DIは前月比0.5ポイント増の41.9となり、2カ月連続で改善した。国内景気は、一部で駆け込み需要も発生するなど、小幅ながら2カ月連続で上向いた。今後は、地政学的リスクなど下押し要因も多いが、経済正常化に向けたプラス材料も表れ、おおむね横ばい傾向で推移すると見込まれる。
- 10業界中、『サービス』『卸売』など8業界が改善。「情報サービス」などデジタル関連が堅調に推移したほか、10月以降の値上げを前に『卸売』などで駆け込み需要もみられた。一方、原材料の高騰や円安傾向が進むなか、仕入単価DIは20業種で過去最高を更新した。
- 10地域中9地域が改善、1地域が悪化。都道府県別では31都道府県が改善、15県が悪化、1県が横ばいとなった。観光地域での消費関連や公共工事の受注、DXなどソフト関連が押し上げた。規模別では、「中小企業」「小規模企業」が2カ月連続で改善した一方、「大企業」が2カ月ぶりに悪化した。
- 10業界中、『サービス』『卸売』など8業界が改善。「情報サービス」などデジタル関連が堅調に推移したほか、10月以降の値上げを前に『卸売』などで駆け込み需要もみられた。一方、原材料の高騰や円安傾向が進むなか、仕入単価DIは20業種で過去最高を更新した。
- 『サービス』(46.3)…前月比0.9ポイント増。2カ月連続で改善。「最悪期(2020年)との比較になるが、動員が戻ってきている」(遊園地)といった声もあり、「娯楽サービス」(同2.1ポイント増)や「飲食店」(同3.7ポイント増)など個人向けサービス業の景況感が回復。また、DX需要が旺盛な「情報サービス」(同0.3ポイント増)は、景気DIが51業種中最も高い水準で、堅調な推移が続いた。他方、「お盆の時期は市内で多くの観光客がみられたが、以降は平日を中心に弱い状況が続いている」(旅館)など、「旅館・ホテル」(同0.6ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。また、電力価格が上昇するなか「電気・ガス・水道・熱供給」の仕入単価DI(83.3)は、全51業種中最も高い水準となっている。
- 『卸売』(39.6)…同0.4ポイント増。2カ月ぶりに改善。「テレワーク、インボイス制度、キャッシュレスなど好材料がそろっている」(事務用機械器具卸売)など「機械・器具卸売」(同0.7ポイント増)が改善。さらに、10月以降の値上げを前に「酒類値上げ前の駆け込み需要が始まっている」(酒類卸売)など駆け込みの動きもみられた。他方、「建材・家具、窯業・土石製品卸売」(同1.0ポイント減)は悪化。「資材が高騰し、新築住宅の価格が大幅に値上がり。家を買いたい人がローンを組めない」(木材・竹材卸売)との声が聞かれた。
- 『製造』(41.1)…同0.1ポイント増。2カ月ぶりに改善。「受注状況が非常に好調である」(成人男子・少年服製造)など「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同3.6ポイント増)が大きく改善したほか、「輸出梱包は円安の影響もあり、輸出額が17カ月連続して増加」(樹脂フィルム等加工)など、企業によっては円安による好影響がみられた。一方、「原料高、原油高、円安の影響があり値上げも予定通りできない」(植物油脂製造)といった、原料高や円安による仕入単価の上昇を懸念する企業も多く、『製造』の仕入単価DIは78.2(同0.3ポイント増)と3カ月ぶりに上昇。また、自動車メーカーの減産や生産停止が続くなか、自動車部品など「輸送用機械・器具製造」(同1.0ポイント減)は3カ月ぶりに悪化した。
- 『小売』(36.7)…同0.4ポイント増。2カ月連続で改善。10月以降の値上げを前にして、酒小売など一部で駆け込み需要の影響がみられた。一方、燃料価格の高止まりが続くなか、ガソリンスタンドが含まれる「専門商品小売」(同0.7ポイント減)は悪化。「各種商品小売」(同1.9ポイント減)も「原材料の値上げで販売価格が上昇。包材、電力などのコストも増加」(スーパーストア)など、原材料や電力価格の上昇がマイナス要因となった。
- 「中小企業」「小規模企業」が2カ月連続で改善した一方、「大企業」は2カ月ぶりに悪化した。食品値上げの影響が一部でみられたものの、「中小企業」で個人消費関連が上向いた。
- 「大企業」(43.6)…前月比0.2ポイント減。2カ月ぶりに悪化。『建設』や『不動産』は、建築資材の不足などで工期の長期化やコストアップの影響が表れた。また相次ぐ食品値上げを受けて飲食料品卸売・小売の景況感が大きく悪化した。
- 「中小企業」(41.6)…同0.6ポイント増。2カ月連続で改善。「未完成の手持工事がある」という状況に加え、生産・出荷量や設備稼働率が2カ月ぶりに上向いたほか、飲食店や教育サービスなど個人消費関連の改善も目立った。
- 「小規模企業」(40.7)…同0.9ポイント増。2カ月連続で改善し、3カ月ぶりに40台へと復帰。「値上げをしたが、客足の目立った減少はない」「経済効果があったイベントの復活」など、行動制限のない秋シーズンのなか、厳しいながらも飲食店が大きく上向いた。
- 『東北』『北陸』『九州』など10地域中9地域が改善、『北関東』が悪化した。都道府県別では31都道府県が改善、15県が悪化、1県が横ばいとなった。観光地域での消費関連や公共工事の受注、DXなどソフト関連が押し上げた。
- 『東北』(39.3)…前月比1.2ポイント増。4カ月ぶりに改善。域内6県のうち「青森」など5県が改善し、「山形」が悪化した。「観光で訪れるお客さまが多くなっている」(一般飲食店)など、飲食店を含む『サービス』が3カ月ぶりに上向き、全体を押し上げた。
- 『北陸』(41.7)…同0.9ポイント増。2カ月ぶりに改善。域内4県のうち「新潟」「石川」「福井」が改善した一方、「富山」が悪化した。公共工事が発注件数・金額とも増加した『建設』や、DX投資がIT補助金による追い風を受けたソフト開発などが好調だった。
- 『九州』(43.0)…同1.7ポイント増。3カ月ぶりに改善。域内8県のうち「福岡」など5県が改善、「佐賀」など3県が悪化した。『運輸・倉庫』は「設備投資がやや上向き貨物量も前期比プラス」「受注は順調」などの声もあり、厳しいながら4カ月ぶりに上向いた。
- 食料主要105社では、10月から6,699品目が値上げ。全企業においても10月~12月の間に16.7%の企業で値上げを予定している。
- 食品の値上げによる家計負担額は、年間で6万8,760万円の増加となる見込み。
- 前年からの販売単価の変化ごとに景気DIを算出したところ、販売単価が前年から低下した企業は景気DIも低い傾向。また、販売単価が非常に上昇した企業の景気DIも低い。
< 2022年9月の動向 : 小幅に改善 >
2022年9月の景気DIは前月比0.5ポイント増の41.9となり、2カ月連続で改善した。
9月の国内景気は、原材料の価格高騰や円安傾向が続いた一方、新型コロナウイルスの新規感染者数が小康状態の影響を受ける形で推移した。例えば、10月以降の値上げを前に一部で駆け込み需要の発生がみられた。DX(デジタルトランスフォーメーション)需要が旺盛なほか、徐々に人流が戻りつつある個人向けサービス業の景況感が上向いた。他方で、原材料や電力価格の上昇や人手不足の再燃、食品を含む生活必需品の相次ぐ値上げ、自動車メーカーの減産・生産停止などはマイナス要因だった。
国内景気は、一部で駆け込み需要も発生するなど、小幅ながら2カ月連続で上向いた。
< 今後の見通し : おおむね横ばい傾向で推移 >
今後1年間程度の国内景気は、新型コロナの感染拡大にともなう社会状況から、経済活動の制限が徐々に解除され、社会全体が平時へと向かう力が景気を支える原動力になると見込まれる。DXなどデジタル需要の拡大や観光需要喚起策の実施、各種経済対策、対面型サービスを中心としたリベンジ消費などはプラス材料となろう。一方で、資源価格の上昇や円安の進行にともなう食品を含む生活必需品の値上げや人手不足の高まり、各国の金融引き締め政策による経済減速やロシア・ウクライナ情勢など、景気を下押しさせる国内外の要因も多い。
今後は、地政学的リスクなど下押し要因も多いが、経済正常化に向けたプラス材料も表れ、おおむね横ばい傾向で推移すると見込まれる。
業界別:8業界が改善。10月以降の値上げを前に一部で駆け込み需要も発生
規模別:「中小企業」が2カ月連続で改善も、「大企業」は食品値上げが悪影響
地域別:10地域中9地域が改善、観光地域での個人消費関連が堅調
【調査先企業の属性】
1.調査対象(2万6,494社、有効回答企業1万1,621社、回答率43.9%)
2.調査事項
・景況感(現在)および先行きに対する見通し・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2022年9月15日~9月30日(インターネット調査)
【景気動向指数(景気DI)について】
■TDB景気動向調査の目的および調査項目全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万5千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測DI
景気DIの先行きを予測する指標。ARIMAモデルに、経済統計やTDB景気動向調査の「売り上げDI」、「設備投資意欲DI」、「先行き見通しDI」などを加えたstructural ARIMAモデルで分析し、景気予測DIを算出している。
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:窪田、池田、杉原、石井
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
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