2022年12月の景気動向調査
国内景気は5カ月ぶりの小幅悪化
■調査結果のポイント
- 2022年12月の景気DIは前月比0.1ポイント減の43.0となり、5カ月ぶりに悪化した。国内景気は、新規感染者数が急増したなか、生産コストの上昇や生活費の高まりなどによって、5カ月ぶりに悪化した。今後は、実質利上げの影響や海外経済情勢などに左右されながら、おおむね横ばい傾向で推移するとみられる。
- 10業界中6業界、51業種中33業種で悪化した。仕入単価DIが10業種で最高水準となるなど原材料価格の高止まり傾向に加え、新型コロナの感染者数の増加も悪材料となった。また「旅館・ホテル」などを筆頭に人手不足や超過労働が深刻となっている。
- 10地域中7地域が悪化、2地域が改善、1地域が横ばい。全国的に新規感染者数が増加したなか29道府県が悪化、17都県が改善した。天候不順や価格転嫁の遅れなどが下押し要因となった。一方、インバウンド消費は好材料。規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が5カ月ぶりにそろって悪化した。
- 10業界中6業界、51業種中33業種で悪化した。仕入単価DIが10業種で最高水準となるなど原材料価格の高止まり傾向に加え、新型コロナの感染者数の増加も悪材料となった。また「旅館・ホテル」などを筆頭に人手不足や超過労働が深刻となっている。
- 『製造』(41.5)…前月比0.4ポイント減。4カ月ぶりに悪化。自動車関連は半導体などの部品供給が不足しているといった声が多く「輸送用機械・器具製造」(同1.1ポイント減)や「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同0.5ポイント減)は2カ月連続で悪化した。「飲食料品・飼料製造」(同0.5ポイント減)は仕入単価DIが80を超えるなど原材料価格の高騰などの影響を大きく受けた。一方で、全国旅行支援などが奏功し寝具製造業など一部業種からは好調の声が聞かれ「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.4ポイント増)は2カ月連続で改善。
- 『不動産』(44.8)…同0.8ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「住宅の着工戸数が減少している」(貸事務所)や「建築費の高騰と土地の値上がりにより、売れ行きが悪くなっている。日銀の利上げによる住宅ローン金利が上がることなど心配」(建物売買)といった声があがる。土地相場の上昇や建築資材の高騰、そのほかテナントの空室など下押し要因は多い。
- 『卸売』(41.0)…同横ばい。円安にともなうコスト増や感染者数増加による飲食・飲酒機会のキャンセルなどが影響し「飲食料品卸売」(同0.6ポイント減)は悪化した。書籍の電子化・読書人口の減少などから「紙類・文具・書籍卸売」(同3.2ポイント減)は2カ月連続で悪化。また自動車の減産などが響く「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(同0.3ポイント減)や患者の受診抑制が続く医薬品卸売など「化学品卸売」(同0.3ポイント減)も景況感は下向いた。一方で、スクラップ価格上昇の声もある「再生資源卸売」(同2.7ポイント増)や「国土強靭化計画での工事発注がある」(建築材料卸売)というように「建材・家具、窯業・土石製品卸売」(同0.7ポイント増)は改善した。
- 『サービス』(47.7)…同0.4ポイント増。5カ月連続で改善。「年末年始による物流倉庫や食品工場などからの受注が増えている」(労働者派遣)といった声が聞かれた「人材派遣・紹介」(同3.5ポイント増)やDXに関連する需要の多い「情報サービス」(同0.6ポイント増)の景況感は上向いた。また11月に続き全国旅行支援が好材料となり、客単価があがったという声もある「飲食店」(同2.4ポイント増)は4カ月連続で改善。「旅館・ホテル」(同2.6ポイント減)は悪化ながらも3カ月連続で50を超えた。ただし、仕入単価DIは81.0、雇用過不足DI(正74.4・非74.3)、時間外労働時間DI(67.7)も過去最高となり、取り巻く経営環境に厳しさがみられている。他方、新型コロナ再拡大による病床の使用制限や来院数減少などが影響し「医療・福祉・保健衛生」(同0.8ポイント減)は悪化した。
- 「大企業」「中小企業」「小規模企業」が5カ月ぶりにそろって悪化した。原材料価格の高止まりや一部の半導体不足など、電気工事の停滞や生鮮食品の価格上昇などへと広がった。
- 「大企業」(44.8)…前月比0.2ポイント減。3カ月ぶりに悪化。「飼料の高止まりが続き、価格に反映できていない」など、外的要因や商品市況の影響を受けた『農・林・水産』の景況感が大きく悪化した。また住宅着工戸数の減少も悪材料となった。
- 「中小企業」(42.6)…同0.1ポイント減。5カ月ぶりに悪化。『小売』や『製造』など10業界中5業界が悪化した。原材料価格の高騰や公共工事の減少に加え、半導体不足による電気通信工事の停滞など、『建設』が8カ月ぶりのマイナスに転じた。
- 「小規模企業」(41.3)…同0.1ポイント減。5カ月ぶりに悪化。石油製品の価格高止まりの状況が続くなか、自動車販売において「新車納期の遅れや中古車価格の高騰」など、厳しい小売環境が続いた。さらに電力などエネルギー価格の高騰も景況感を下押しした。
- 『東北』『四国』など10地域中7地域が悪化、『東海』『南関東』の2地域が改善、『北陸』が横ばい。全国的に新規感染者数が増加したなか29道府県が悪化、17都県が改善した。天候不順や価格転嫁の遅れなどが下押し要因となった。一方、インバウンド消費は好材料。
- 『東北』(39.4)…前月比0.9ポイント減。4カ月ぶりに悪化。域内6県中5県が悪化、「宮城」が改善となった。天候不順による不作が仕入価格の上昇につながった一方、販売価格への転嫁も進まず、『農・林・水産』『小売』が大きく悪化した。
- 『四国』(39.3)…同0.7ポイント減。2カ月連続で悪化。域内4県中3県が悪化、「香川」が改善した。新規感染者が増加するなか「一般の方の人通りがほとんどない」との声があがるなど、「旅館・ホテル」「娯楽サービス」を含む『サービス』が大幅に落ち込んだ。
- 『東海』(41.7)…同0.3ポイント増。5カ月連続で改善。域内4県のうち「三重」「静岡」が改善した。「外国人観光客が増加し始めたため、バスの稼働が増えてきた」など一般旅客向けが好調に推移したほか、『製造』は電気機械や精密機械などが大きく改善した。
- 時間外労働時間DIは全体で51.1と前月比0.4ポイント増の4カ月連続で増加傾向にある
- とりわけ、「旅館・ホテル」(67.7)と「飲食店」(58.4)は、過去最高水準を更新、急速に時間外労働時間が増えている
- 12月の仕入単価DIは73.6、販売単価DIは61.1とそれぞれ高水準。仕入販売ギャップは12.5と狭まる傾向にあるが依然として10pt以上の差
- 食品値上げが続くなか、食料品関連業種では川上、川下の双方で仕入販売ギャップは高まっている。今後も値上げの余地が大いにある
< 2022年12月の動向 : 改善傾向がストップ >
2022年12月の景気DIは前月比0.1ポイント減の43.0となり、5カ月ぶりに悪化した。
12月の国内景気は、電力・ガスなどのライフラインや食品を含む生活必需品の価格上昇、原材料価格の高止まりなどがマイナス要因となった。また、一部の業種で影響がみられる半導体不足は自動車や電気機械、電気工事などで悪材料となったほか、新型コロナウイルスの新規感染者数の急増も下押し要因だった。
一方、全国旅行支援の継続やインバウンド消費などが好材料となり観光産業の景況感は上向いたほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)などIT投資需要も引き続き好調だった。
国内景気は、新規感染者数が急増したなか、生産コストの上昇や生活費の高まりなどによって、5カ月ぶりに悪化した。
< 今後の見通し : 横ばい傾向で推移 >
今後1年間程度の国内景気は、社会全体の平時に向かう動きにともなう経済活動の正常化が景気を支える原動力になるとみられるものの、米中欧などの海外経済やウクライナ情勢、実質利上げにともなう金利上昇などの影響を受けつつ推移する。全国旅行支援の継続やインバウンド消費の拡大など、観光産業への政策的後押しは好材料となろう。外国為替相場の円高傾向への調整は物価上昇を抑制する要因になるとみられる。また賃上げの動きやDX需要の拡大などもプラス材料。
一方で、新型コロナの感染動向や金利上昇による借入金返済の負担、生活費の増加、人手不足感の高まりなどが悪材料。
今後は、実質利上げの影響や海外経済情勢などに左右されながら、おおむね横ばい傾向で推移するとみられる。
業界別:6業界33業種で悪化。原材料価格の高止まりや感染者数増が悪材料
規模別:全規模が小幅ながら5カ月ぶりにそろって悪化
【調査先企業の属性】
1.調査対象(2万7,163社、有効回答企業1万1,680社、回答率43.0%)
2.調査事項
・景況感(現在)および先行きに対する見通し・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2022年12月16日~2023年1月5日(インターネット調査)
【景気動向指数(景気DI)について】
■TDB景気動向調査の目的および調査項目全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万6千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測DI
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:窪田、池田、石井
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
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