2023年12月の景気動向調査
国内景気は、年末需要が堅調でじわり改善
■調査結果のポイント
- 2023年12月の景気DIは前月比0.1ポイント増の44.9となり、3カ月連続で改善した。国内景気は、年末需要が堅調だったなかで、暖冬による季節商品の不振や自動車メーカーの不正問題などがマイナス要因となった。今後の国内景気は、持続的な賃上げや金利動向などを受け、横ばい傾向で推移するとみられる。
- 年末需要が下支えし全10業界中6業界が前月から改善、前年同月の水準を9業界で上回った。地域別では、10地域中5地域が改善、1地域が横ばい、4地域が悪化した。堅調なインバウンド需要が継続した一方で、季節需要が低調だった。規模別では、「中小企業」と「小規模企業」が改善した一方で、「大企業」は3カ月ぶりに悪化した。
- 今後の景況感について、7業種で大幅な回復を見込んでいる。好材料としては、半導体業界の回復や大規模開発・イベントの開催などがあげられた。
また、能登半島地震による影響が懸念される。
<2023年12月の動向 :小幅な改善続く >
2023年12月の景気DIは前月比0.1ポイント増の44.9となり、3カ月連続で小幅の改善にとどまった。国内景気は、年末需要が堅調だったなかで、暖冬による季節商品の不振や自動車メーカーの不正問題などがマイナス要因となった。
12月は、インバウンド需要の継続やボーナス支給による堅調な年末需要がプラス材料だった。飲食業やスポーツ・娯楽施設などの観光産業が上向いたほか、外出機会の増加にともなう化粧品需要の拡大、一部業界で進む価格転嫁なども押し上げ要因となった。またインフルエンザの流行で医薬品関連は上向いた。
他方、暖冬による雪不足や季節商品の販売不振は下押し材料となったほか、人手不足による機会損失の長期化なども悪材料だった。
< 今後の見通し : 横ばい傾向で推移 >
今後は、インバウンド需要の拡大が見込まれるなかで、賃上げの継続が焦点となろう。特に実質賃金の下落が続いている個人消費の行方がカギとなる。GXの推進や企業の業績改善、経済対策の実施などは押し上げ要因と言える。
他方、2024年1月1日に発災した令和6年能登半島地震の影響が懸念される。人手不足の長期化や2024年問題に加えて、米欧中など海外経済の動きにも注視すべきであろう。金融政策の変更が予想されるなかで、インフレ率の動向のほか、金利など金融市場や金融システムへの影響が注目される。
今後の国内景気は、持続的な賃上げや金利動向などを受け、横ばい傾向で推移するとみられる。
業界別: 年末需要が下支えし、『運輸・倉庫』や『小売』など6業界で改善
- 年末需要が下支えし全10業界中6業界が前月から改善、前年同月の水準を9業界で上回った。特に、忘年会など会食機会の増加は、飲食関係に限らず好影響となった。他方、軽自動車メーカーのダイハツ工業の不正問題は幅広い業種にマイナスの影響を及ぼしている。
- 『運輸・倉庫』(44.5)…前月比0.7ポイント増。2カ月ぶりに改善。「年末に向けて輸送量が増えてきた」(一般貨物自動車運送)や「忘年会シーズンが始まり利用が増加」(一般乗用旅客自動車運送)などトラック輸送やタクシーなどで年末需要を実感する声が複数あがった。加えて、倉庫関連も冷蔵倉庫業で50超となるなど、お歳暮やクリスマス、正月などのイベントが景況感を押し上げた。また、荷主の運賃改定の受け入れが、増加してきているなど前向きな声も寄せられた。ただし、ドライバー不足ほか懸念材料は多い。
- 『小売』(41.5)…同0.3ポイント増。2カ月ぶりに改善。観光客の増加や年末年始のイベント開催ほか、書き入れ時の年末に入り「飲食料品小売」(同1.5ポイント増)は4カ月ぶりに改善した。インフルエンザの流行などで医薬品販売が増えたほか、外出機会の増加にともない化粧品需要も押し上げ要因となり「医薬品・日用雑貨品小売」(同1.4ポイント増)は3カ月連続で上向いた。他方、自動車の代理店からは「一気に逆風が吹き荒れている」(自動車(新車)小売)といった厳しい声があがるなど、新車・中古車ともに「自動車・同部品小売」(同0.5ポイント減)は2カ月連続で悪化した。
- 『サービス』(50.9)…同0.1ポイント増。2カ月ぶりに改善。「忘年会などの行事が戻ってきた」(酒場、ビヤホール)など、昨年と比較し飲食需要が多い「飲食店」(同4.6ポイント増)は2カ月連続で上向き、3カ月ぶりに50台に回復した。冬期講習など受験シーズンを控え「教育サービス」(同1.8ポイント増)は3カ月ぶりに改善。冬のボーナス支給などで「娯楽サービス」(同3.1ポイント増)は2カ月ぶりに改善となった。他方、堅調なインバウンド需要が続くなか、雪不足など天候不順や慢性的な人手不足などが下押しし「旅館・ホテル」(同7.4ポイント減)は4カ月ぶりに悪化した。
- 『製造』(41.5)…同0.1ポイント減。3カ月ぶりに悪化。自動車生産は安定していたものの、ダイハツ工業の不正問題の影響で「関連部品の受注が停止」(自動車部分品・付属品製造)といった声があがる「輸送用機械・器具製造」(同2.5ポイント減)は、2カ月ぶりに悪化。帝国データバンクの調査でも8,000社超の企業に影響を及ぼす可能性があると推計している。また、中国ほか海外市場への荷動きが停滞といった声が聞かれた「化学品製造」(同0.5ポイント減)は4カ月ぶりに下落した。他方、酒類の消費が上向くなど会食機会の増加などで「飲食料品・飼料製造」(同0.6ポイント増)は3カ月連続で改善した。
規模別: 「中小企業」「小規模企業」が小幅改善も、規模内での二極化進む
- 「中小企業」「小規模企業」が改善した一方で、「大企業」は3カ月ぶりに悪化した。人流の増加はプラス材料となったが、職人不足や競争の激化で『建設』が全規模で低調だった。
- 「大企業」(48.1)…前月比0.3ポイント減。3カ月ぶりに悪化。職人不足による工期延長などもあり『建設』『不動産』が悪化するなど、10業界中6業界で下落した。一方で、「人流やインバウンドの回復の流れは順調」とあるように、飲食関連が上向いた。
- 「中小企業」(44.3)…同0.1ポイント増。3カ月連続で改善。6業界が上向くも、小幅にとどまる。燃油資材価格の高止まりが続くなか、タクシーなど旅客運送が堅調だった。魚価が高値で推移した『農・林・水産』が上向いた一方で、『建設』は3カ月ぶりに悪化した。
- 「小規模企業」(43.3)…同0.2ポイント増。2カ月ぶりに改善。「物価高のなかでも、ニーズがある商品は確実に売れている」など、飲食料品を中心に『小売』が2カ月ぶりに改善した。他方、『建設』は受注競争が激しくなるなか、利益率の低下が下押し要因となった。
地域別: 10地域中5地域で改善も、地震の影響を懸念
- 『近畿』『北陸』など10地域中5地域が改善、『北海道』が横ばい、『東北』など4地域が悪化した。都道府県別では20府県が改善、23府県が悪化した。堅調なインバウンド需要が継続した一方で、季節需要が低調だった。また能登半島地震による影響が懸念される。
- 『近畿』(44.6)…前月比0.5ポイント増。3カ月連続で改善。「奈良」「大阪」「兵庫」の3府県が改善した。インバウンド需要やウイスキーブームもあり「飲食店」などが好調な『サービス』は3カ月連続で50台の推移となったほか、『建設』も上向いた。
- 『北陸』(42.5)…同0.2ポイント増。2カ月連続で改善。域内4県のうち「富山」「新潟」が上向いた。スポットでの需要が増えた『製造』や自動車販売が押し上げた『小売』がプラスとなった。ただし、1月1日に発災した令和6年能登半島地震の影響が懸念される。
- 『東北』(40.3)…同1.0ポイント減。5カ月連続で悪化。域内6県のうち「岩手」「福島」「宮城」「青森」が下落した。暖冬の影響で季節商品が低調だった『小売』が大きく悪化したほか、復興予算の縮小にともなう公共工事の減少で『建設』が2カ月連続で落ち込んだ。
- 今後の景況感について、7業種で7ポイント以上の大幅な回復を見込んでいる
- 好材料としては、半導体業界の回復や大規模開発・イベントの開催、自社の企業努力などがあげられた
- 東日本大震災発生後の東北の景気DIは前月から7.7ポイント、北海道胆振東部地震発生後の北海道の景気DIは同3.2ポイント落ち込んだ
- 大規模な震災の翌月まで悪化傾向は続き、企業からも自粛による景気停滞、停電やサプライチェーン寸断の影響を危惧する声が寄せられた
【調査先企業の属性】
1.調査対象(2万7,143社、有効回答企業1万1,407社、回答率42.0%)
2.調査事項
・景況感(現在)および先行きに対する見通し・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2023年12月18日~2024年1月5日(インターネット調査)
【景気動向指数(景気DI)について】
■TDB景気動向調査の目的および調査項目全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測DI
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:窪田、池田、石井
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
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