2024年8月の景気動向調査
国内景気は2カ月連続で改善
■調査結果のポイント
- 2024年8月の景気DIは前月比0.5ポイント増の44.3となり、2カ月連続で改善した。国内景気は、観光産業や季節的な需要がけん引し、全体の景況感を押し上げた。今後の景気は、海外の状況など不透明な要素もある一方で、IT関連の投資など好材料も多く、底堅く推移していくとみられる。
- 業界別では、『製造』など10業界中7業界で改善し、悪化は3業界だった。特に、外出機会の増加や猛暑、備蓄品の駆け込み需要などで飲食、食品製造など幅広い業種へ好材料が波及した。地域別では、10地域中9地域が改善、1地域が悪化。月半ばでの地震発生や後半の台風上陸があったものの、各地の観光関連や地場産業の押し上げがプラス要因となった。規模別では、「大企業」が横ばい、「中小企業」と「小規模企業」はともに改善した。
- 夏本番を迎え、お盆シーズンでの人出の増加により夏祭りなどイベント関係を中心に好調な声があがった。
< 2024年8月の動向 : 2カ月連続で改善 >
2024年8月の景気DIは前月比0.5ポイント増の44.3となり、2カ月連続で改善。国内景気は、観光産業や季節的な需要がけん引し、全体の景況感を押し上げた。
8月は、全国的な猛暑の継続と、地震や台風の影響を受けながらの経済活動となった。好調なインバウンド需要やお盆シーズンでの外出機会の増加により、観光産業の景況感が改善した。また、飲料や冷菓、喫茶店など飲食関連、熱中症予防グッズ、冷房設備工事などの猛暑による需要拡大のほか、自然災害に備えた駆け込み需要がみられた。好調な半導体関連の設備投資に加え、価格転嫁の広がりも好材料。
一方で、工場の稼働停止や人手不足の継続、コスト負担の増加などのマイナス材料はあった。
< 今後の見通し : 底堅く推移 >
今後は、実質賃金の上昇の継続性のほか、市場金利や外国為替レートの動向、米大統領選の行方などが注目される。インバウンド消費を含む観光産業の回復、DXの推進やグリーンエネルギー政策のほか、人手不足に対応するための自動化やロボット技術への投資は増加すると見込まれる。加えて生成AIの普及や半導体の需要増加もプラス要因となろう。
一方で、物流コストの上昇やインフレの進行、人手不足、家計の節約志向、国際的な緊張などはマイナス材料となる。
今後の景気は、海外の状況など不透明な要素もある一方で好材料も多く、底堅く推移していくとみられる。
業界別:『製造』を中心に7業界で上向くも、台風や地震などが下押し要因に
- 『製造』など10業界中7業界で改善し、悪化は3業界だった。特に、外出機会の増加や猛暑、備蓄品の駆け込み需要などで飲食、食品製造など幅広い業種へ好材料が波及した。他方、台風の上陸や南海トラフ地震臨時情報などは下押し要因となった。
- 『製造』(40.7)… 前月比0.9ポイント増。3カ月連続で改善。「観光需要の復活、地元の購買力のアップ」(生菓子製造)といった声が聞かれ、お盆シーズンなど人流増加が好材料となり「飲食料品・飼料製造」(同0.8ポイント増)は5カ月ぶりに改善した。長引く猛暑により夏物衣料の継続販売など顧客ニーズの変化に応えた「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同0.4ポイント増)も同じく5カ月ぶりに上向いた。さらに、半導体関連が好調な「化学品製造」(同1.6ポイント増)は3カ月ぶりに回復するなど、『製造』は12業種中9業種で改善し、5カ月ぶりに40台となった。 他方、自動車の減産が悪影響といった声のほか、台風の接近にともなう各メーカーの工場の稼働停止も響き「輸送用機械・器具製造」(同0.7ポイント減)は4カ月ぶりに悪化した。
- 『建設』(47.3)… 同0.4ポイント増。3カ月連続で改善。「インバウンド需要でホテルの設備更新の意欲が旺盛」(電気配線工事)や「ラピダスなどの大型案件があり、仕事は多い」(一般電気工事)など大規模な設備投資案件が下支えし景気を押し上げた。また、猛暑による冷房工事や災害対応のための特需、再エネ工事の盛り上がりなどもプラス材料となった。 他方、官民問わず発注量が増えるなか、職人や現場監督者の確保ができず新規受注ができないといった声が複数寄せられた。
- 『運輸・倉庫』(45.0)… 同2.4ポイント増。2カ月ぶりに改善。小規模企業を中心に幅広く回復した。「トラック部門は4月より大幅値上げを実施、増収増益が続いている」(集配利用運送)や「運賃転嫁も少しずつ進んでいる」(一般貨物自動車運送)など、徐々に価格転嫁が進み収益性の改善もみられている。さらに、「インバウンドを中心に需要は堅調」(一般貸切旅客自動車運送)といった声のほか、夏休みも重なり観光バスは好調だった。 他方、原油価格の高止まりや人手不足、中東情勢で海上輸送が不安定などといった声がマイナス材料としてあげられている。
- 『農・林・水産』(43.3)… 同2.1ポイント増。3カ月ぶりに改善。「肉豚相場が高騰している」(養豚)など価格上昇が景況感にプラスに作用している。さらに、小売現場では一部地域での米不足による価格上昇や、仕入れと同時に売れるなどの声も聞かれた。また、スイカなどを栽培する企業からは猛暑により売り上げが伸びたといった声も寄せられた。 他方、飼料や肥料、エネルギー価格の高止まりなどは悪材料だった。
- 「大企業」は横ばいだった一方、「中小企業」と「小規模企業」はともに改善した。「大企業」で設備投資への意欲に回復傾向がみられたほか、「中小企業」は中・小型案件の受注が活発だった。「小規模企業」では物流業で運賃改定の進展がみられた。
- 「大企業」(48.2)…前月比横ばい。設備稼働率が2カ月連続で上昇し、設備投資意欲も4カ月ぶりにプラスに転じるなど、投資関連に改善傾向が表れた。他方、住宅金利の先高感から新築住宅に買い控えの動きもみられた。
- 「中小企業」(43.6)…同0.7ポイント増。2カ月連続で改善。中・小型の設備投資や建設案件への受注機会の増加で『製造』が改善した。また、飲食店が大きく上向いたこともあり、食材の供給元となる『農・林・水産』は3カ月ぶりにプラスへ転じた。
- 「小規模企業」(42.5)…同0.7ポイント増。3カ月連続で改善。団体旅行の復調や運賃改定が進みつつある『運輸・倉庫』が大きく改善し、「大企業」「中小企業」を上回る水準が続いた。また夏のイベント開催もプラス材料だった。
- 『北関東』『九州』など10地域中9地域が改善、『東海』が悪化。都道府県別では35道府県が改善、11府県が悪化した。月半ばでの地震発生や後半の台風上陸があったものの、各地の観光関連や地場産業の押し上げがプラス要因となった。
- 『北関東』(42.1)… 前月比0.9ポイント増。2カ月連続で改善。域内5県中4県が上向いた。インバウンド消費や近隣地域からの観光消費が好調だったほか、猛暑関連特需も景況感を押し上げた。また活発なリフォーム需要も中小企業の改善要因となった。
- 『九州』(47.3)… 同1.1ポイント増。2カ月ぶりに改善。域内8県中5県が改善、3県が悪化した。運賃の値上げやインバウンド消費で『運輸・倉庫』が好調だったほか、『建設』は都市開発や工場の建築、設備投資が押し上げた。
- 『東海』(43.7) … 同0.2ポイント減。3カ月ぶりに悪化。域内4県のうち「愛知」「三重」の2県が下落した。マンション建設や観光関連は押し上げ要因だったものの、自動車の減産に加えて、地震や台風の影響で「夏の繁忙期に大打撃」となった。
- 夏本番を迎え、お盆シーズンでの人出の増加により夏祭りなどイベント関係を中心に好調な声があがった
- ただし、南海トラフ地震臨時情報や台風の上陸にともない、経済活動が抑制されたといった声も複数寄せられた
地域別:10地域中9地域で改善、観光関連がプラス要因も天候不順が下押し
【調査先企業の属性】
1.調査対象(2万7,247社、有効回答企業1万1,414社、回答率41.9%)
2.調査事項
・景況感(現在)および先行きに対する見通し・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2024年8月19日~8月31日(インターネット調査)
【景気動向指数(景気DI)について】
■TDB景気動向調査の目的および調査項目全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測DI
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:窪田、池田、石井
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
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