企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート
止まらない!値上げ実施済・予定企業は64.7%に!!
~ロシアのウクライナ侵攻で原材料価格の高騰が加速、6社に1社は値上げできず~
~ロシアのウクライナ侵攻で原材料価格の高騰が加速、6社に1社は値上げできず~
新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした供給制約やロシアのウクライナ侵攻などにより、原材料価格や、輸送費などに影響を及ぼす原油価格の高騰が続いています。こうしたなか、コストアップを受けた企業で製商品の値上げの動きが相次いでいます。
そこで、帝国データバンクは、企業の今後1年の値上げ動向についてアンケートを行いました。
- アンケート期間は2022年4月1日~5日、有効回答企業数は1,855社(インターネット調査)
アンケート結果
企業の64.7%が主要製商品・商材、サービスの値上げを実施済・予定
主要製商品・商材、サービスの値上げ動向について尋ねたところ、3割の企業で「2021年10月~2022年3月の間にすでに値上げした」(32.7%)と回答していました(複数回答、以下同)。また「2022年4月に値上げした/する予定」は25.7%、5月に値上げを行う企業は11.1%、6月は7.6%となるなど、今後も値上げが続くもようです。総じてみると、2022年4月以降1年以内で値上げしたもしくはする予定の企業は43.2%となりました。また、過去半年間ですでに値上げを行った企業および今後1年以内で値上げする予定の企業の割合は64.7%となっています。
企業からは、「原材料等の高騰にともなう仕入価格の上昇によって販売価格への転嫁となる値上げを行った。ただウクライナ情勢によっては主原料である原油なども上がっており、さらなる仕入価格の高騰が予測される」(紙類・文具・書籍卸売、東京都)といった声があげられました。
企業の値上げ動向(複数回答)
一方で、「値上げしたいが、できない」企業は16.4%となり、約6社に1社にのぼりました。企業からは、「安定した販売先があれば良いが、受注産業で競合もいるため、値上げすると競合に負けてしまう」(建材・家具、窯業・土石製品製造、静岡県)といった声が聞かれ、値上げによる顧客離れを恐れている様子がうかがえます。
「飲食料品・飼料製造」の8割超が値上げ実施・予定、川下産業に影響の恐れ
すでに値上げをした企業の割合を業種別にみると、2021年ごろから価格の高騰がみられる鋼材などの「鉄鋼・非鉄・鉱業」は59.8%と全体(32.7%)を27.1ポイント上回っています。また、「化学品製造」(55.6%)も5割台で続いています。他方、今後1年以内で値上げを行う企業について、「飲食料品・飼料製造」は73.1%と突出して高く、2022年7月~9月でも2割超の企業が値上げを予定。特に、「飲食料品・飼料製造」および「化学品製造」ではすでに値上げを行った企業および今後1年以内で値上げする予定の企業割合は8割超となり、川下産業に影響を及ぼす可能性があります。
企業の値上げ動向 ~注目業種~(複数回答)
企業からは、「材料コストが高騰しているため、量産部品の単価の見直しは都度依頼、相談を実施している。発注メーカーさまも状況は把握しており、柔軟に対応していただいている」(鉄鋼・非鉄・鉱業、京都府)といった声が寄せられています。
一方で、『運輸・倉庫』などでは失注につながる懸念などを理由に値上げが進んでおらず、今後も値上げ予定の企業が限られます。特に『運輸・倉庫』では「値上げしたいが、できない」企業は30.9%と全国(16.4%)を14.5ポイント上回っており、価格転嫁が進んでいない状況にあります。
『小売』では37.9%の企業が値上げを実施済み、全体を5.2ポイント上回る
小売業や個人向けサービス業を含む「個人消費関連」 をみると、企業の43.2%が2022年4月以降1年以内で値上げをしたもしくはする予定。消費者心理がさらに冷やされる恐れもあります。なかでも生活必需品を含め人々の生活にすぐに結びつく製品を扱う『小売』において、すでに値上げを行った企業は37.9%と全体(32.7%)を5.2ポイント上回りました。一方、値上げしたいができない企業は9.7%で全体(16.4%)より6.7ポイント低くなっています。
企業からは、「原材料、包材、段ボール、液体炭酸ガス、コーンなどの値上げにより、これまでの価格では利益を維持できなくなった」(飲食料品小売、石川県)など、原油・原材料価格の高騰により製商品を値上げせざるを得なくなったことを示す声があげられています。個人消費関連企業の値上げ動向(複数回答)
まとめ
本調査の結果、2022年4月以降1年以内で値上げしたもしくはする予定の企業は43.2%となりました。一方で、受注の失注の恐れなどで企業の16.4%は値上げしたいが、できない状況にあります。帝国データバンク『TDB景気動向調査』によると、2022年3月における企業の仕入単価DIが過去20年で最高の水準となりました。原材料高に加え昨今の人手不足や円安などによるコスト増は企業の収益力に大きな影響を及ぼす可能性があるなか、値上げの動きは続くとみられます。
[1]「個人消費関連」は小売および個人向けサービスの業種が含まれる
[2]帝国データバンク「TDB景気動向調査(全国)― 2022年3月調査 ―」(2022年4月5日発表)
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:石井 ヤニサ
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。