緊急調査:電気料金値上げに関する企業の実態アンケート
電気料金、1年前の約1.3倍に増加
「100円」アップに対して、価格転嫁は「10円」
~ 企業の13%で「時短」「休暇」など、働き方を変えて対応 ~
「100円」アップに対して、価格転嫁は「10円」
~ 企業の13%で「時短」「休暇」など、働き方を変えて対応 ~
ロシアのウクライナ侵攻や円安などによるエネルギー価格の高騰などを背景に電気料金の値上げが相次いでいる。
さらに、東北電力、中国電力、四国電力、沖縄電力、北陸電力の5社がすでに2023年4月からの規制料金の値上げを経済産業省に申請している。値上げ幅は3~4割にのぼり、家庭および企業へのさらなる影響が見込まれる。
そこで、帝国データバンクは、電気料金の値上げについてアンケートを行った。
- アンケート期間は2022年12月2日~6日、有効回答企業数は1,265社(インターネット調査)
アンケート結果
電気料金の総額、1年前の約1.3倍に増加
電気料金の総額が1年前と比べてどのように変化したか尋ねたところ、「【増加】20~40%未満」とした企業は全体の34.4%で最も高くなった。次いで「【増加】20%未満」(30.0%)、「【増加】40~60%未満」(12.4%)で続いた。「増加」した企業を合わせると、86.6%で1年前より電気料金の総額が増加した。他方、「変わらない」は7.4%、「減少」は1.3%となった。電気料金の総額は1年前より平均[1]28.7%増となり、約1.3倍へと増加している。
企業からは、「使用量は昨対比95%程度だが、値上げにともない、電気料金は昨対比150%程度と高騰している。ただ、その大部分が顧客利用によるものであり、サービス品質維持のためにも大幅に削減することは考えていない。社内利用分を削減することで、電気料金を昨対比140%程度に抑えたい」(フィットネスクラブ)などといった声が聞かれた。
他方、「自動車減産などの影響で稼働率が下がっているため電気料金の総額は横ばいとなった」(界面活性剤製造)との声にあるように、電気使用量の減少により電気料金の総額が増加しなかった企業も一部でみられた。また、「今年4月にメイン照明機器をLED照明へ入れ替える工事を実施。その結果、40%ほど電気料金が下がった」(荒物小売)というように、対応策の実施により電気料金が減少した声もあがっていた。電気料金の変化率(1年前比)
企業の7割は電気料金の増加分を売価へ「全く転嫁できず」
電気料金の増加分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか尋ねたところ、『多少なりとも価格転嫁できている』企業は29.6%となった。
内訳をみると、電気料金の増加分に対し、「すべて価格転嫁できている」企業は2.2%にとどまった。「8割以上できている」企業は1.9%、「5割以上8割未満できている」は3.5%となった。一方で、『全く価格転嫁できていない』企業は70.4%にのぼった。
総じてみると、電気料金の増加分に対する販売価格等への転嫁割合を示す「価格転嫁率[2]」は9.9%と1割未満にとどまった。これは電気料金が100円増加した場合に9.9円しか販売価格等に反映できていないことを示している。
電気料金の価格転嫁状況
企業からは、「電気料金増加分の価格転嫁のお願いをし始めたが、あまり細かく改定実施はできないことからピークが見えてこないと案内しづらい」(糖類製造)や「使用量は減らせても単価の上昇によって料金が増えており、卸売業のため電気料金の上昇を理由とした価格転嫁は受け入れてもらいにくく、手の打ちようがない」(配管冷暖房装置等卸売)といった声が聞かれた。
「稼働・営業時間の短縮」など、”働き方”を変えて電気料金値上げに対応する企業も
電気料金の値上げが続くなか、この冬の電力需給が逼迫する懸念の高まりにより政府は12月1日から全国の家庭や企業を対象に、冬季としては7年ぶりの節電要請を始めた。そこで、電気料金値上げ・節電要請への対応策(検討含む)について尋ねたところ、「こまめな消灯」(70.9%)がトップとなった(複数回答、以下同)。次いで「空調などの温度設定の見直し」(47.7%)、「消費電力の少ない製品・設備の導入(LEDなど)」(31.8%)が続いた。
電気料金値上げ・節電要請への対応策(複数回答)
一方で、企業の13.3%は「稼働・営業時間の短縮」(6.0%)や「休暇取得の推奨」(4.6%)、「始業・終業の時刻を早める」(2.6%)、「在宅勤務の強化」(2.3%)などといった、働き方を変えるような対応策を実施または検討していた。
また、より安い電気料金を求め、約4%の企業が「新電力会社から大手電力会社への変更」(4.2%)および「大手電力会社から新電力会社への変更」(4.1%)を実施、または検討している。
さらに、「本社、支店、営業所について今年度すべて太陽光発電システムの導入が完了し、自家消費で補われない分について電力会社を利用している」(燃料小売)といった声にあるように「自家発電の設置または増加」(2.8%)を実施・検討している企業も一部でみられた。まとめ
本アンケートの結果、電気料金の総額が1年前と比べて増加した企業は86.6%にのぼっている。電気料金の総額は平均28.7%増となり、1年前の約1.3倍に増加したことになる。しかしながら、電気料金の増加分を販売価格やサービス料金に『全く価格転嫁できていない』企業は7割に達しており、「価格転嫁率」は1割未満にとどまった。
こうしたなか、企業が実施、または検討している対応策について「こまめな消灯」が7割でトップとなり、取り組みとして比較的始めやすい対応策が上位にあがっている。一方で、「稼働・営業時間の短縮」や「休暇取得の推奨」、「始業・終業の時刻を早める」などといった働き方を変えるような対応策を実施、または検討している企業も一部でみられた。他方、より安い電気料金の追求などを理由に、「新電力会社から大手電力会社への変更」および「大手電力会社から新電力会社への変更」を実施、または検討している企業はそれぞれ約4%となった。
エネルギー価格の高騰が続くなか、電力会社が業績赤字を回避するためには電気料金の値上げは避けては通れない。このような状況下、政府は2023年1月より家庭および企業向けに電気料金の支援を行う予定であるが、その支援内容は電力会社が申請した電気料金の値上げのペースに追いつかず国民負担は依然として大きくなることが想定されている。政府はより手厚い支援策や、消費電力の少ない製品・設備の導入を支援する補助金制度をさらに充実させるほか、企業が電気料金の増加分を円滑に価格転嫁できる環境整備の推進など、多方面にわたる対策を強化することが肝要である。
[1] 電気料金の変化率の平均は、「【増加】100%以上(2倍以上)」、「【増加】80~100%未満」、「【増加】60~80%未満」、「【増加】40~60%未満」、「【増加】20~40%未満」、「【増加】~20%未満」、「【変わらない】」、「【減少】20%未満」、「【減少】20~40%未満」、「【減少】40~60%未満」、「【減少】60~80%未満」、「【減少】80~100%未満」、「【減少】100%以上(電力会社等から電気を購入しなくなったなど)」の各選択肢の中央値に各回答者数を乗じ加算したものから全回答者数で除したもの(ただし、「分からない」は除く)[2]価格転嫁率は、各選択肢の中央値に各回答者数を乗じ加算したものから全回答者数で除したもの
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株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:石井ヤニサ、伊藤由紀、池田直紀
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