2024年の注目キーワードに関するアンケート
来年のキーワード、「人手不足」「2024年問題」急上昇。トップは「ロシア・ウクライナ情勢」、「物価高」が続く
~企業の93.7%が「中東情勢」含む『海外情勢』をキーワードに~
2023年を振り返ると、厳しい企業環境のなかにも明るい兆しも表れた。
新型コロナウイルス感染症は5月に感染症法上の位置づけが2類から5類へ移行したことで行動制限が完全に撤廃され、外出機会の復活やインバウンド需要の拡大ほか、企業系イベントの再開など個人消費を喚起する動きが活発化し、各地で賑わいが増している。
一方で、食品や生活必需品などの値上げにより普段の生活に影響が続くなか、9月の実質賃金は前年同月比2.4%減と、18カ月連続でマイナスを記録。また、ロシア・ウクライナ情勢や中東での新たな争いなど海外情勢の緊迫度も増しており、今後の動向を注視する必要がある。
そこで帝国データバンクは、2024年の注目キーワードについて企業へアンケートを行った。
- アンケート期間は2023年11月10日~14日、有効回答企業数は1,090社(インターネット調査)
アンケート結果
「ロシア・ウクライナ情勢」などの海外情勢、物価高や人手不足関連が上位にランクイン
2024年の注目キーワードについて尋ねたところ、「ロシア・ウクライナ情勢」をあげた企業の割合が73.2%でトップとなった(複数回答、以下同)。以下、「物価(インフレ)」(64.7%)、「人手不足・人材確保」(63.6%)、「中東情勢(ハマス・イスラエルの紛争)」(62.2%)、「財政政策(増税など)」(59.1%)が続いた。
特に『海外情勢』関連は、2つのキーワードがトップ5にランクインしており、10位の「チャイナリスク(政治、経済的リスクなど)」(49.2%)も含めると9割を超える企業が2024年のキーワードとして捉える結果となった。
2024年の注目キーワード トップ20(複数回答)
2023年のキーワードと比べると、ランキング上位の顔ぶれは引き続き『海外情勢』や『物価の上昇』関連が目立った。一方、「人手不足・人材確保」は2023年から20ポイント以上も上昇したほか、運送業や建設業などの時間外労働の上限規制により発生する「2024年問題」が7位にランクインするなど、『人手不足』に関連するキーワードが大幅に上昇した。
企業間の取引価格の上昇が沈静化する兆しが表れていることなどにより、2023年のキーワードで2位にランクインしていた「原油・原材料価格」は20ポイント以上低下した。一方で、企業にとってもコスト負担となり、個人消費にも影響を与える「財政政策(増税など)」や「賃上げ」といったキーワードの割合が上昇した。
業界別、『運輸・倉庫』で「2024年問題」が突出して高く、『小売』は「食品・日用品価格」が目立つ
業界別に、全体より10ポイント以上高かった注目キーワードをみると、『建設』では2024年問題が迫るなか、「人手不足・人材確保」(74.3%、全体比+10.7ポイント)および「2024年問題」(61.1%、同+10.3ポイント)の割合が高く表れた。
『不動産』では「金利動向」(37.9%、同+11.8ポイント)など、『小売』では「食品・日用品価格」(36.5%、同+15.6ポイント)といった個人消費に直接関わるキーワードがほかの業界より目立った。
『運輸・倉庫』でも『建設』と同様に自らの業界に直結する「2024年問題」(79.0%、同+28.2ポイント)が全体を大幅に上回り、「物価(インフレ)」(79.0%、同+14.3ポイント)なども高かった。
2024年の注目キーワード 業界別~全体比10ポイント以上プラス~(複数回答)
まとめ
本アンケートの結果、2024年の注目キーワードに「ロシア・ウクライナ情勢」をあげた企業が7割超でトップとなり、「中東情勢」などを含む『海外情勢』関連キーワードは9割を超えた。企業からは、「戦争や紛争の拡大で原材料・資材の高騰・調達難が懸念される」(飲食料品・飼料製造)など、海外情勢の変化にともなう原材料やエネルギー価格の高騰を懸念する声が多く聞かれた。
このほか、物価の上昇や人手不足、増税、賃上げ、2024年問題、金融政策も半数を超える企業が注目する結果となった。企業からは「今後の物価高対応や助成金などが気になる。また、人材確保・定着率向上のため給与のベースアップを行ったが、さらなる賃上げも考えざるを得ない情勢になっている」(専門サービス)といったコメントがあがった。また、「2024年問題により流通への影響が懸念される」(化学品卸売)との声があるように、幅広い業界において物流への影響を懸念し、注目している様子がうかがえた。
他方、「生成AI(Chat GPTなど)」(35.8%)、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」(34.2%)は約3社に1社がキーワードとして捉えている。企業からは「自社のような中小企業は、賃上げを継続するために生産性の向上が必須。そのための業務プロセスのデジタル化・DX、生成AIなどの活用がうまくできるかが重要なポイントになると考える」(サッシ卸売)とのコメントがあり、デジタル技術の活用が進み、国内企業の生産性向上や競争力の強化につながることが期待される。
2024年の注目キーワードは、前年に引き続き、今まさに直面する問題が多くあがる形となった。海外の戦争や紛争の収束がカギを握るほか、政府・行政による多岐にわたる経済政策や、企業のビジネス環境の変化への対応力が問われる1年となろう。
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:石井 ヤニサ、伊藤 由紀、池田 直紀
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。
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~企業の93.7%が「中東情勢」含む『海外情勢』をキーワードに~
2023年を振り返ると、厳しい企業環境のなかにも明るい兆しも表れた。
新型コロナウイルス感染症は5月に感染症法上の位置づけが2類から5類へ移行したことで行動制限が完全に撤廃され、外出機会の復活やインバウンド需要の拡大ほか、企業系イベントの再開など個人消費を喚起する動きが活発化し、各地で賑わいが増している。
一方で、食品や生活必需品などの値上げにより普段の生活に影響が続くなか、9月の実質賃金は前年同月比2.4%減と、18カ月連続でマイナスを記録。また、ロシア・ウクライナ情勢や中東での新たな争いなど海外情勢の緊迫度も増しており、今後の動向を注視する必要がある。
そこで帝国データバンクは、2024年の注目キーワードについて企業へアンケートを行った。
- アンケート期間は2023年11月10日~14日、有効回答企業数は1,090社(インターネット調査)
アンケート結果
「ロシア・ウクライナ情勢」などの海外情勢、物価高や人手不足関連が上位にランクイン
2024年の注目キーワードについて尋ねたところ、「ロシア・ウクライナ情勢」をあげた企業の割合が73.2%でトップとなった(複数回答、以下同)。以下、「物価(インフレ)」(64.7%)、「人手不足・人材確保」(63.6%)、「中東情勢(ハマス・イスラエルの紛争)」(62.2%)、「財政政策(増税など)」(59.1%)が続いた。特に『海外情勢』関連は、2つのキーワードがトップ5にランクインしており、10位の「チャイナリスク(政治、経済的リスクなど)」(49.2%)も含めると9割を超える企業が2024年のキーワードとして捉える結果となった。
2024年の注目キーワード トップ20(複数回答) 2023年のキーワードと比べると、ランキング上位の顔ぶれは引き続き『海外情勢』や『物価の上昇』関連が目立った。一方、「人手不足・人材確保」は2023年から20ポイント以上も上昇したほか、運送業や建設業などの時間外労働の上限規制により発生する「2024年問題」が7位にランクインするなど、『人手不足』に関連するキーワードが大幅に上昇した。
企業間の取引価格の上昇が沈静化する兆しが表れていることなどにより、2023年のキーワードで2位にランクインしていた「原油・原材料価格」は20ポイント以上低下した。一方で、企業にとってもコスト負担となり、個人消費にも影響を与える「財政政策(増税など)」や「賃上げ」といったキーワードの割合が上昇した。
業界別、『運輸・倉庫』で「2024年問題」が突出して高く、『小売』は「食品・日用品価格」が目立つ
業界別に、全体より10ポイント以上高かった注目キーワードをみると、『建設』では2024年問題が迫るなか、「人手不足・人材確保」(74.3%、全体比+10.7ポイント)および「2024年問題」(61.1%、同+10.3ポイント)の割合が高く表れた。『不動産』では「金利動向」(37.9%、同+11.8ポイント)など、『小売』では「食品・日用品価格」(36.5%、同+15.6ポイント)といった個人消費に直接関わるキーワードがほかの業界より目立った。
『運輸・倉庫』でも『建設』と同様に自らの業界に直結する「2024年問題」(79.0%、同+28.2ポイント)が全体を大幅に上回り、「物価(インフレ)」(79.0%、同+14.3ポイント)なども高かった。
2024年の注目キーワード 業界別~全体比10ポイント以上プラス~(複数回答) まとめ
本アンケートの結果、2024年の注目キーワードに「ロシア・ウクライナ情勢」をあげた企業が7割超でトップとなり、「中東情勢」などを含む『海外情勢』関連キーワードは9割を超えた。企業からは、「戦争や紛争の拡大で原材料・資材の高騰・調達難が懸念される」(飲食料品・飼料製造)など、海外情勢の変化にともなう原材料やエネルギー価格の高騰を懸念する声が多く聞かれた。
このほか、物価の上昇や人手不足、増税、賃上げ、2024年問題、金融政策も半数を超える企業が注目する結果となった。企業からは「今後の物価高対応や助成金などが気になる。また、人材確保・定着率向上のため給与のベースアップを行ったが、さらなる賃上げも考えざるを得ない情勢になっている」(専門サービス)といったコメントがあがった。また、「2024年問題により流通への影響が懸念される」(化学品卸売)との声があるように、幅広い業界において物流への影響を懸念し、注目している様子がうかがえた。
他方、「生成AI(Chat GPTなど)」(35.8%)、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」(34.2%)は約3社に1社がキーワードとして捉えている。企業からは「自社のような中小企業は、賃上げを継続するために生産性の向上が必須。そのための業務プロセスのデジタル化・DX、生成AIなどの活用がうまくできるかが重要なポイントになると考える」(サッシ卸売)とのコメントがあり、デジタル技術の活用が進み、国内企業の生産性向上や競争力の強化につながることが期待される。
2024年の注目キーワードは、前年に引き続き、今まさに直面する問題が多くあがる形となった。海外の戦争や紛争の収束がカギを握るほか、政府・行政による多岐にわたる経済政策や、企業のビジネス環境の変化への対応力が問われる1年となろう。
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:石井 ヤニサ、伊藤 由紀、池田 直紀
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。