能登半島地震の影響と防災に関する企業アンケート(「令和6年能登半島地震」関連調査)
企業の95%が「企業防災」の大切さを改めて実感
~ 全国企業の13.3%、『北陸』の43.2%に影響見込み ~
2024年1月1日に発生した能登半島を震源とする地震(「令和6年能登半島地震」、以下「能登半島地震」)は甚大な人的、物的被害をもたらしている。
帝国データバンクの調査[1] では、今回の地震で被害の大きい「能登地方」に本社を置く企業は4,075社にのぼる。交通の寸断などによって生産・消費活動に広く影響が出るとみられ、復旧・復興が長期化すれば、能登地方の企業と取引を行う全国の企業にも影響が広がる可能性がある。
そこで帝国データバンクは、同地震による企業活動への影響のほか、企業防災(企業が行う自然災害への対策)に対する意識についてアンケートを行った。
本アンケートが、今回の地震による影響の把握ならびに復興や今後の自然災害への備えの一助 となれば幸いである。
- アンケート期間は2024年1月12日~17日、有効回答企業数は1,255社(インターネット調査)。なお、甚大な被害を受けた能登地方の企業にはアンケート要請を行っていない。
アンケート結果
能登半島地震による影響を受けた/見込む企業は13.3%、『北陸』では4割にのぼる
能登半島地震による自社の企業活動への影響(直接・間接問わず)の有無を尋ねたところ、『影響がある(見込み含む)』(「既に影響が出ている」と「影響が見込まれる」の合計)とする企業は13.3%となった。内訳をみると、「既に影響が出ている」が4.3%、「影響が見込まれる」が9.0%だった。
既に影響が出ている企業からは、「社屋の一部が損壊した。幸い生産設備に問題はなかったが、一部配管漏洩や防煙ガラス破損、部材転落などの被害があった」(精密機械、医療機械・器具製造、富山県)といった、地震による直接的な影響を示す声が聞かれた。
他方、「材料が納入できなくなり、工期延長が発生した」(建設、埼玉県)や「金属製品の納入を検討していたが、取引先の工場が被災して納品時期が不明とのことで、別製品に切り替えることになった」(専門サービス、茨城県)のように、被災した地域以外でもサプライチェーンなどへの間接的な影響がみられる。
また、「影響の有無を確認中」で詳細が判明していない企業は7.4%、「現時点で影響はない」企業は75.3%だった。しかし、そうした企業のなかでも「今後、仕入先の工場などの稼働状況がどうなるかが懸念される」(機械・器具卸売、愛知県)との声もあるように、今後の影響を懸念している様子がうかがえた。
能登半島地震による企業活動への影響
『影響がある(見込み含む)』の割合を規模別にみると、「中小企業」は12.1%と全国(13.3%)より若干低かった。一方、比較的幅広い取引ネットワークを持つ「大企業」は20.1%と全国を6.8ポイント上回る結果となった。
また、地域別では被災地である『北陸』が43.2%と突出して高かった。企業からは、「人的、物理的被害は甚大であるが、震災による自粛・萎縮マインドにともなう地域経済活動の停滞も心配。災害復興の継続支援のほか、風化させない取り組みが必要」(金融、石川県)といったコメントがあがっていた。
能登半島地震の『影響がある(見込み含む)』企業割合 ~規模別~
企業の約95%が「企業防災」の大切さを改めて実感。「飲食料備蓄」「連絡網の整備」が上位
能登半島地震の発生を機に、企業として改めて大切だと考えた防災対策を尋ねたところ、「飲料水、非常食などの備蓄」が39.2%でトップとなった(複数回答3つまで、以下同)。次いで「社内連絡網の整備・確認」(38.3%)が続き、「非常時の社内対応体制の整備・ルール化」(31.6%)や「非常時向けの備品の購入」(28.4%)などが上位に並んだ。また、「事業継続計画(BCP)自体の策定・見直し」(20.6%)は5社に1社となった。
企業からは、「自然災害の強力な破壊力に対し、何かをするというより、起きた後の社員と社員の家族の生活をどのように安定させるかということを真剣に考えるきっかけになった。備蓄をどのように進めるかをしっかり検討していきたい」(情報サービス、岡山県)や「危機管理の重要性を再認識した。今回のように長期休暇中での災害は安否確認などに時間がかかる。緊急連絡網の整備と災害時での対応を常に議論することが重要だと実感した」(建設、栃木県)といった声が聞かれた。
また、被害の軽減につながり得る「建物や設備の強度確認、耐震補強」(10.7%)が1割程度にとどまるなか、「自社では、自然災害への備蓄保存や自家発電、社内マニュアルなどすべて対策を講じているが、今回のような災害ではどこまで実際に対応できるのかが不安である。自然災害が起こる前に、建物老朽化の確認のほか、災害の起きやすい地域では事前に対策を講じる必要があると考えている」(不動産、大阪府)とのコメントも聞かれた。
なお、今回の地震を機に何らかの企業防災対策の大切さを改めて実感した企業は94.9%にのぼった。
能登半島地震を機に、改めて大切だと考えた企業防災対策(上位10項目、3つまでの複数回答)
まとめ
本アンケートの結果、能登半島地震によって、企業の13.3%が影響を受けた、もしくは影響を受けると見込んでいる。地震による建物の破損といった直接的な被害のほか、原材料や部品などの仕入れや商品の受注減、周辺地域の宿泊施設のキャンセルなど間接的な影響が出ている企業も一定数みられた。
また、今回の地震の発生を機に、企業の約95%が「企業防災」の大切さを改めて実感していることも明らかになった。なかでも「飲食料備蓄」や「連絡網の整備」といった基本的な企業防災対策が4割近くで上位となり、政府が近年推進している「BCP策定・見直し」を改めて考えた企業は5社に1社だった。
帝国データバンクの調査[2]では、能登半島に営業所や工場などの拠点を進出している企業は890社であることが判明している。
4,000社を超える能登半島の企業と合わせて約5,000社の部品・商品などの供給停滞や遅延などの影響が次第に顕在化するとみられる。災害復興が急がれるとともに、調達難などに陥る企業では代替調達などの対策を実施するほか、関係機関によるサプライチェーン全体の影響の確認や適切な支援も求められる。
また、いつ起こるか分からない自然災害による被害を最小限に抑えるために、企業を含め社会全体が一丸となって防災・減災対策を強化することが必要不可欠といえよう。
[1]帝国データバンク『「令和6年能登半島地震」関連調査』(2024年1月5日発表)
[2]帝国データバンク『「令和6年能登半島地震」関連調査(事業所・工場立地等)』(2024年1月17日発表)
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~ 全国企業の13.3%、『北陸』の43.2%に影響見込み ~
2024年1月1日に発生した能登半島を震源とする地震(「令和6年能登半島地震」、以下「能登半島地震」)は甚大な人的、物的被害をもたらしている。
帝国データバンクの調査[1] では、今回の地震で被害の大きい「能登地方」に本社を置く企業は4,075社にのぼる。交通の寸断などによって生産・消費活動に広く影響が出るとみられ、復旧・復興が長期化すれば、能登地方の企業と取引を行う全国の企業にも影響が広がる可能性がある。
そこで帝国データバンクは、同地震による企業活動への影響のほか、企業防災(企業が行う自然災害への対策)に対する意識についてアンケートを行った。
本アンケートが、今回の地震による影響の把握ならびに復興や今後の自然災害への備えの一助 となれば幸いである。
- アンケート期間は2024年1月12日~17日、有効回答企業数は1,255社(インターネット調査)。なお、甚大な被害を受けた能登地方の企業にはアンケート要請を行っていない。
アンケート結果
能登半島地震による影響を受けた/見込む企業は13.3%、『北陸』では4割にのぼる
能登半島地震による自社の企業活動への影響(直接・間接問わず)の有無を尋ねたところ、『影響がある(見込み含む)』(「既に影響が出ている」と「影響が見込まれる」の合計)とする企業は13.3%となった。内訳をみると、「既に影響が出ている」が4.3%、「影響が見込まれる」が9.0%だった。
既に影響が出ている企業からは、「社屋の一部が損壊した。幸い生産設備に問題はなかったが、一部配管漏洩や防煙ガラス破損、部材転落などの被害があった」(精密機械、医療機械・器具製造、富山県)といった、地震による直接的な影響を示す声が聞かれた。
他方、「材料が納入できなくなり、工期延長が発生した」(建設、埼玉県)や「金属製品の納入を検討していたが、取引先の工場が被災して納品時期が不明とのことで、別製品に切り替えることになった」(専門サービス、茨城県)のように、被災した地域以外でもサプライチェーンなどへの間接的な影響がみられる。
また、「影響の有無を確認中」で詳細が判明していない企業は7.4%、「現時点で影響はない」企業は75.3%だった。しかし、そうした企業のなかでも「今後、仕入先の工場などの稼働状況がどうなるかが懸念される」(機械・器具卸売、愛知県)との声もあるように、今後の影響を懸念している様子がうかがえた。
能登半島地震による企業活動への影響
『影響がある(見込み含む)』の割合を規模別にみると、「中小企業」は12.1%と全国(13.3%)より若干低かった。一方、比較的幅広い取引ネットワークを持つ「大企業」は20.1%と全国を6.8ポイント上回る結果となった。
また、地域別では被災地である『北陸』が43.2%と突出して高かった。企業からは、「人的、物理的被害は甚大であるが、震災による自粛・萎縮マインドにともなう地域経済活動の停滞も心配。災害復興の継続支援のほか、風化させない取り組みが必要」(金融、石川県)といったコメントがあがっていた。
能登半島地震の『影響がある(見込み含む)』企業割合 ~規模別~
企業の約95%が「企業防災」の大切さを改めて実感。「飲食料備蓄」「連絡網の整備」が上位
能登半島地震の発生を機に、企業として改めて大切だと考えた防災対策を尋ねたところ、「飲料水、非常食などの備蓄」が39.2%でトップとなった(複数回答3つまで、以下同)。次いで「社内連絡網の整備・確認」(38.3%)が続き、「非常時の社内対応体制の整備・ルール化」(31.6%)や「非常時向けの備品の購入」(28.4%)などが上位に並んだ。また、「事業継続計画(BCP)自体の策定・見直し」(20.6%)は5社に1社となった。
企業からは、「自然災害の強力な破壊力に対し、何かをするというより、起きた後の社員と社員の家族の生活をどのように安定させるかということを真剣に考えるきっかけになった。備蓄をどのように進めるかをしっかり検討していきたい」(情報サービス、岡山県)や「危機管理の重要性を再認識した。今回のように長期休暇中での災害は安否確認などに時間がかかる。緊急連絡網の整備と災害時での対応を常に議論することが重要だと実感した」(建設、栃木県)といった声が聞かれた。
また、被害の軽減につながり得る「建物や設備の強度確認、耐震補強」(10.7%)が1割程度にとどまるなか、「自社では、自然災害への備蓄保存や自家発電、社内マニュアルなどすべて対策を講じているが、今回のような災害ではどこまで実際に対応できるのかが不安である。自然災害が起こる前に、建物老朽化の確認のほか、災害の起きやすい地域では事前に対策を講じる必要があると考えている」(不動産、大阪府)とのコメントも聞かれた。
なお、今回の地震を機に何らかの企業防災対策の大切さを改めて実感した企業は94.9%にのぼった。能登半島地震を機に、改めて大切だと考えた企業防災対策(上位10項目、3つまでの複数回答)
まとめ
本アンケートの結果、能登半島地震によって、企業の13.3%が影響を受けた、もしくは影響を受けると見込んでいる。地震による建物の破損といった直接的な被害のほか、原材料や部品などの仕入れや商品の受注減、周辺地域の宿泊施設のキャンセルなど間接的な影響が出ている企業も一定数みられた。
また、今回の地震の発生を機に、企業の約95%が「企業防災」の大切さを改めて実感していることも明らかになった。なかでも「飲食料備蓄」や「連絡網の整備」といった基本的な企業防災対策が4割近くで上位となり、政府が近年推進している「BCP策定・見直し」を改めて考えた企業は5社に1社だった。
帝国データバンクの調査[2]では、能登半島に営業所や工場などの拠点を進出している企業は890社であることが判明している。
4,000社を超える能登半島の企業と合わせて約5,000社の部品・商品などの供給停滞や遅延などの影響が次第に顕在化するとみられる。災害復興が急がれるとともに、調達難などに陥る企業では代替調達などの対策を実施するほか、関係機関によるサプライチェーン全体の影響の確認や適切な支援も求められる。
また、いつ起こるか分からない自然災害による被害を最小限に抑えるために、企業を含め社会全体が一丸となって防災・減災対策を強化することが必要不可欠といえよう。
[1]帝国データバンク『「令和6年能登半島地震」関連調査』(2024年1月5日発表)
[2]帝国データバンク『「令和6年能登半島地震」関連調査(事業所・工場立地等)』(2024年1月17日発表)
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:石井 ヤニサ、伊藤 由紀、池田 直紀
TEL:03-5919-9343
E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。