2020年度の賃金動向に関する企業の意識調査

賃金改善理由、「労働力の定着・確保」が80.6%で過去最高に
~ 賃金改善は53.3%と高水準ながら、やや一服感も ~

はじめに

2019年の景気は「回復局面」とする企業が2年連続で1ケタ台となる一方、「悪化局面」は7年ぶりに3割台となるなど、2018年に引き続き、厳しさの増す1年となった(帝国データバンク「2020年の景気見通しに対する企業の意識調査」)。また、2019年10月の消費税率引き上げで家計の負担が増すなか、政府は日本経済団体連合会(経団連)に7年連続で賃上げ継続を要請するなど、今後の賃金動向が大きく注目されている。
そこで、帝国データバンクは2020年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2020年1月調査とともに行った。

  • 調査期間は2020年1月20日~31日、調査対象は全国2万3,665社で、有効回答企業数は1万405社(回答率44.0%)。なお、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し、今回で15回目
  • 賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)することで、定期昇給は含まない

調査結果(要旨)

  1. 2020年度の賃金改善が「ある」と見込む企業は53.3%と、4年連続で5割を超えたものの、前回調査(2019年1月)から2.2ポイント減少している。賃金改善について「ある」が「ない」を10年連続で上回ると同時に、その差も33.1ポイントと非常に大きな状態が続く
  2. 賃金改善の具体的内容は、ベースアップが45.2%(前年度比0.4ポイント減)、賞与(一時金)が26.3%(同4.0ポイント減)となった。ベアは4年連続で4割台の高水準となった一方で、賞与(一時金)は2割台に減少した
  3. 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が80.6%で過去最高を更新してトップとなり、人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっている。一方で、「自社の業績拡大」(36.0%)が前年から4.9ポイント下回った。改善しない理由は、「自社の業績低迷」が前年度比5.5ポイント増の58.1%となり、5年ぶりの増加となった
  4. 2020年度の総人件費が「増加」すると回答した企業は68.9%と、前回調査から1.6ポイント減となった。業界別では『サービス』『運輸・倉庫』『建設』で高い。総人件費は平均2.85%増加すると見込まれるものの、伸び率は前年度よりやや低下すると予想される。そのうち、従業員の給与や賞与は総額で約3.7兆円(平均2.50%)増加すると試算される
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