原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査
企業の7割超で価格転嫁に課題
~ 3社に1社は「全くできていない」 ~
~ 3社に1社は「全くできていない」 ~
- 調査期間は2022年1月18日~1月31日、調査対象は全国2万4,072社で、有効回答企業数は1万1,981社(回答率49.8%)
調査結果
企業の8割弱で原材料の不足や高騰の影響あり
自社の主な商品・サービスにおいて原材料の不足や高騰の影響について尋ねたところ、「影響がある」企業は77.3%にのぼった。「影響はない」とする企業は12.2%となった。さらに、「影響がある」企業を細かくみると、4割程度は多少なりとも価格転嫁ができている一方で、「価格転嫁は全くできていない」企業は36.3%となった。
多少なりとも価格転嫁できている企業のうち、「価格転嫁は全てできている」は4.1%、「価格転嫁は8割程度できている」8.8%にとどまった。また、全体の価格転嫁率[1] は25.9%と3割を下回っていた。
一部の企業からは、「仕入れ先の一斉値上げに対して、自社の粗利益改善を含めた価格転嫁を全力で取り組んでいる」(包装用品卸売、愛知県)といった価格転嫁に前向きな声が聞かれた。しかしながら、多くの企業からは「価格転嫁することは、下請けの立場からは不可能」(機械工具卸売、三重県)や「仕事量が少ないなかどこも売り上げ確保のため安価な見積りを提出するため、価格転嫁をしたら入札物件では落札できない」(内装工事、東京都)などいった厳しい声があがっている。【図表1 原材料不足や高騰の影響と価格転嫁の状況】
卸売業を中心に業種によって価格転嫁ができている企業も
業種によって価格転嫁の状況は異なっており、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(43.5%)や「再生資源卸売」(40.0%)では4割を超える企業で『8割以上価格転嫁できている』(「価格転嫁は全てできている」と「8割程度」の合計)と回答した。取材を行うと「原材料不足が顕著となっているため、価格の上昇について合意されやすい」(鉄鋼卸売、愛知県)や「メーカー側で買い値が設定されるが、原材料確保に主眼が置かれるため比較的高値で推移している」(鉄スクラップ、徳島県)といった理由から価格転嫁に対する土壌がある程度生まれていることが要因といえる。
しかしながら、「価格転嫁はあくまでも仕入れ価格の値上げのみで、人件費・運送コストなど自社の経費の上乗せができる環境とはなっていない」(鉄鋼卸売、大阪府)といった声もある。
他方で、「運輸・倉庫」(64.8%)や「飲食店」(64.1%)では6割超の企業で「全く価格転嫁できていない」としていた。【図表2 業種別の価格転嫁の状況「8割以上価格転嫁できている」割合】
【図表3 業種別の価格転嫁の状況「全く価格転嫁できていない」割合】
2022年1月の仕入単価DIは68.5、販売単価DIは55.6
帝国データバンク「TDB景気動向調査」で算出した2022年1月の仕入単価DIは68.5、同じく販売単価DIは調査開始以来最高の55.6となった [2]。2021年12月 [3]と比較すると、仕入単価は0.4ポイント、販売単価は0.3ポイントそれぞれ上昇した。とりわけ、仕入単価DIは2020年6月(51.1)以降、横ばいを挟み20カ月連続で上昇している。
また、仕入単価DIと販売単価DIの差を業種別にみると、燃料費の高騰などの影響がある「運輸・倉庫」が18.8ポイントで最も大きく、以下「機械製造」(18.1ポイント)や「電気・ガス・水道・熱供給」「建設」(ともに18.0ポイント)などで価格転嫁が厳しい様子がうかがえた。【図表4 仕入単価DI・販売単価DIの推移】
【図表5 仕入単価DIと販売単価DIの乖離~上位10業種~】
まとめ
本調査の結果、7割を超える企業で原材料などの不足や高騰に関して影響を受けていた。そのようななか、一部では需要側の原材料確保の観点から価格転嫁ができており、特に仕入単価が上昇した企業のうち半数程度で販売価格の上昇が表れていた。ただし、多くの企業で仕入単価の上昇に対して十分に価格へ転嫁できている状況と言えず、引き続き企業にとって厳しい経営環境は続きそうだ。
[1]価格転嫁率は、各選択肢に各回答者数を乗じ加算したものから全回答者数で除したもの(ただし、「影響はない」と「分からない」は除く)
[2]仕入(販売)単価DIは0~100の値をとり、50を上回ると前年同月より仕入(販売)単価が上昇、50を下回ると低下していることを示す
[3]帝国データバンク「TDB景気動向調査(全国)-2021年12月調査-」(2022年1月11日発表)
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